「あはしこ(彼愛し処)」。
「あ(彼)」は特定性なく漠然と何かを指し示します。これは古くは「か(彼)」と言いましたが、後には「あ」が一般的になります。
「はし(愛し)」「こ(処)」に関してはすべて『音語源』のその各々の項参照。古くは「愛(は)しきこ」ではなく「愛(は)しこ」という表現もあり、それでも意味は通じます。
「あはしこ(彼愛し処)」は、「あ(彼)」に感嘆しそれを思っていることが表現され、思念的な「こ(処)」が表現されます。意味は「あそこ(彼処)」に似ています。というか、ほとんど同じです(「あそこ」の「そこ」における「そ」による思念化が「はし(愛し)」によって表現されています(「はし(愛し) 」では何かが感嘆されており、そこには当然「何か」があるわけです)。「そ」は思念的に何かを指し示します→『音語源』「そ(其)」の項)。
「『あしこ、あしこ』とて関山も過ぎぬ」、「あしこに立てるは何人ぞ」。