「あはしかみひ(淡然見火)」。淡(あは)いが確かに見える火(光)。
これは『古事記』や『日本書紀』の冒頭、世界や神々の創造化生部分にある言葉です。「あしかびの如(ごと)く萌(も)え騰(あが)る物(もの)に因(よ)りて成(な)れる神(かみ)の名(な)…」(『古事記』)。原文では「葦芽」と書きます。「あはしかみひ(淡然見火)」とは、淡(あは)いが、希薄だが、確かに見える火(光)、であり、その創造化生において希薄だが確かにある光があらわれたのでしょう。これは『古事記』でも『日本書紀』でも「葦牙」と表記されますが、この表記は、その時点でこの語の意味が不明になっており、「かび(黴)」という言葉が何かが湧くような印象をあたえ、葦(あし)の牙(きば:これで(そこから世界が育つ)芽(め)を表現した。葦の芽は牙のような形をしています)と書かれたのでしょう。