「あげつれあひ(挙げ連れ合ひ)」。「あげ(挙げ)」はこの場合は言葉(言いたいこと)を表すこと。「つれ(連れ)」は何かと同動することを意味し、「つれあひ(連れ合ひ)」は、相互に同動し合うことを意味しますが、ここでは言葉が、あるいは複数の人々が、相互に係わりあうこと。すなわち「あげつらひ」は複数の人が自分の思いや意見を言い合い聞き合うことを意味します。それが元来の意味なのです、後世、特に明治以降、では、関係ありそうな様々なこと、通常は問題にならない些細なこと、をことさらに取り上げることも意味するようです。「事(こと)独(ひと)り断(さだ)むべからず。必(かなら)ず衆(もろもろ)と論(あげつら)ふべし」(『日本書紀』推古天皇十二年)。これは「十七条の憲法」第十七条。この「十七条の憲法」には始めと終わり、第一条と第十七条、に「あげつらひ」という言葉があります。第一条のそれは「上和(かみやはら)ぎ下睦(しもむつ)びて事を論(あげつら)ふに諧(かな)ふときは事理(こと)自(おの)づからに通(かよ)ふ」。
明治以降のものでは「ちかごろ風俗改良の説盛んに興りて、上は婦人(ぢょちう)達の結髪(かみ)の風より、下は日本下駄の不便利まで、人のあげつらふ世の中とぞなりにける」(坪内逍遥『当世書生気質』:1885~86年)。