「あぐりくら (足繰り坐)」の音変化。「く」は連音で濁音化し「り」は消音化しました。「あ(足)」は、「あがき(足掻き)」「あゆひ(足結ひ)」などのように、「あし(足)」を「あ」の一音で表現することがありました。動詞「くり(繰り)」は手前に引くような動作をすることですが、「あぐり(足繰り)」は足を引きたたみ座(すわ)る動作をすること、そして座(すわ)ること。「くら(坐)」はその上に何かが居たり何かを置いたりする装置です(それによりその何かが特別な存在になります)。座(すわ)る坐(くら)、とは、腰掛(椅子)です。一人用の座(すわ)り台、とでもいうようなものです。「やすみしし吾が大君の獣(しし)待つとあぐらに坐(いま)し」(記歌謡97)。「御桟敷(さじき)の前にあぐら立ててゐたるなど、げにぞめでたき」(『枕草子』278)。その「あぐら」に座しているように自らの足を折り組み座すことも「あぐら」と言うようになりました(この意味での胡坐(あぐら)は「あぐみ(足組)」とも言います)。その「あぐら」をする動作は一般に「かく」という動詞になります。