「アククタイ マウクタイ(悪句態 猛句態)」。「態(タイ)」は、外へ現れるしぐさ、様子、様(さま)。「句(ク)」は(文字によるものも含めて)言語表現の一区切り。「いいかと思やあがって。おれがこふいふ句を出す日になっちゃあ、かくごうしろ」(「洒落本」)。「アククタイ マウクタイ(悪句態 猛句態)」は、人をののしったりするような相手に対する悪質な言葉を吐く様子、そうしたあり方、猛々しい言葉を吐く様子、そうしたあり方、ということ。「あくたい」は「あくたいを吐(つ)く」(悪口雑言を言う)の「あくたい」です。「自分から撞突(つきあた)って置きながら、居るが悪いとあくたいもくたい。つけつけと言った揚句」(斎藤緑雨『門三味線』:斎藤緑雨は明治時代の戯作家)。

「い」が消えた「あくたもくた」という言い方もあります。「落とし文あくたもくたを書ならべ」(「雑俳」)。

似た表現に「あくぞもくぞ」もあります。これは、「アククザウ マウクザウ(悪句象 猛句象」。「ザウ(象)」は「ウザウムザウ(有象無象)」(仏教的に正式には「有相無相(ウサウムサウ)」)の「象(ザウ)」。見える形(かたち)の意味。「態(タイ)」よりも表現は静止的ですが、言っていることは「あくたいもくたい」とほとんど変わりません。「哲也のあくぞもくぞを並べて、彼様(あん)な人に死水を取って貰ふ気はないと言って泣く」(二葉亭四迷『其面影』)。