「あかし(赤し)」(形容詞ク活用) の語源

「あかし(赤し)」:「あか(赤)」の形容表現。「あか(赤)」の語源に関しては『音語源』のその項。

形容詞終止形語尾の「し」はS音の動感とI音の進行感により、その動態進行の現実感により、記憶の想起・再起が起きます。つまり「あかし(赤し)」は「あか(赤)」の記憶が想起・再起されているのだということです。この「し」による記憶の想起・再起は文法で過去の助動詞「き」の連体形と言われている「し」でも起こります→「去りし日」。

念のために言えば、文法の本では過去の助動詞「き」・その終止形「き」、が言われ、その連体形「し」が言われ、教科書の「活用表」にそれが書かれていますが、「き」が活用変化を起こし「し」になったり「し」が活用変化を起こして「き」になったりしているわけではありません。そこで起こっていることは表現のために「し」の音(オン)や「き」の音(オン)が利用されたということです。活用変化とは、たとえば、「言ひます」「言へば」の「ひ」と「へ」の変化関係のようなものです。

 

「あかし(明し)」(形容詞ク活用)の語源

「あかし(明し)」:「あかし(明し)」という動詞もありますが(→「夜をあかし」)これは形容詞です。

形容詞「あかし(明し)」は「あけはやし(明け逸し)」の音変化。

「はやし」は、時間的に早いわけではなく、効果的であることにおいて特異的であることを表現します。「はやし(早し・逸し)」という形容詞で表現されることの本質はそういうことなのです(『音語源』※「はやし(早し・逸し)」の項)。一定距離の移動時間が短いことを表現するのはその応用です。昔は「はやき毒」といった表現もありました。これは非常に効果的な毒です。効果の発生が時間的にすぐ、というわけではありません。

「あけ(明け)」がそのように効果的であるとは、(とりわけ視覚的に)開放的であること、すなわち光度が高く、すべてが明瞭・明晰に見えることを意味します。「月あかければ、いとよくありさま見ゆ」。これは月が赤いわけではありません。

 

『音語源』はgogen3000の著作物です。語源辞典のような体裁です。

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