全感を表現する「あ」による動詞。「AをBにあえ」と言った場合、AをBという状態に(Bという状態で)全的印象感を生じさせます。
「これ、(Aを)皇太后の雄しき装(B)にあえ給へる」―これは(Aを)皇太后の雄々しき装いに(すなわち雄々しき皇太后に)、全的に、そのものに、した、ということです。Aを皇太后に似せた、にも意味は似ていますが、似せたのではありません(にせものを作ったのではありません)。Aを、全的に、皇太后だ…と思う状態にしたのです。これは思念的にそうするのであり、Bという状態でありたい、そうあって欲しい、という願望の表現でもあります。つまり、Bにあやかる(AをBにあやからせる)ための様々な努力をすることを意味します。この「あえ」は「あやかる(肖る)」という動詞の基になっています。また、AをBに(Bという状態に)する場合のB(上記の例なら皇太后)や、Aにおいて現実化したB(たとえばBそっくりになったAの特性)を「あえもの」といいます。その(Bの)幸福にあやかろうとしたりするわけです。
料理の「和へ物(あへもの)」は「あへ(和へ)」であって「あえ(肖え)」ではありません。