「あいだれ」は「アイぢとはれ(愛路問はれ)」の音変化。「とはれ(問はれ)」は「とひ(問ひ)」の尊敬表現。動詞「とひ(問ひ・訪い)」は何らかの思念化が起こっている状態で何かを追跡する動態になっていることを表現しますが。疑問をただす、という意味にも、訪れる、という意味にもなります。ここではそれが尊敬表現になっているわけですが、なぜ尊敬表現になっているかというと、尊敬表現の本質は婉曲的関節表現であり、この尊敬表現には、動態を直接には表現せず婉曲化することによりそこに表現を避けた何かがあることを表現しようとする思いがあるからです。なぜ直接的な表現を避けたのかといえば、ここでの「アイぢ(愛路)」、愛の路(みち)、は男女間のこと、さらには性的なこと、を含意するからです。そうした、男女間のこと、さらには性的なことを含意する「愛の路(みち)」を常に訪(たづ)ね歩いているような印象であることが、「あいだれ」。別に好色や淫乱というわけではありません。美しいそんな世界に常にときめいているような状態なのです。これは年頃の少女が嬉(うれ)しげでもあるが恥ずかしげでもあるような状態にあることなども表現します。「(年長だが)なほ若やかになまめきあいだれ」「あまの子なれば、とて、さすがにうちとけぬさま。いとあいだれたり」。