「あいだちなし(『あい』立ち無し)」。「なし」は「無し」ですが、語頭の「あい」は、とりわけ女の、返事の言葉。応答、受け入れ・応諾、承引を表現します(「あいなし」の「あい」と同じです)。「たち(立ち)」という動詞は発生感のあることを表現しますが、この場合は「ひき立ち」「目立ち」などのそれのように、印象として特性的に発生感が感じられること、そうした特性があること、を意味します。(とりわけ女の、返事の言葉。応答、受け入れ・応諾、承引を表現する)「あい」の「たち(立ち)」(発生感)があるとは、受け入れの特性が感じられること、人や、人の言うことを素直に受け入れる性質が感じられることです。それが「ない(無い)」とは、人に素直でなかったり、周囲など気にせず遠慮したり憚ったりする様子などない状態であったりします。それが「あいだちなし」です。「心よからずあいだちなき者に思ひ(人に素直さがない者と思い)」。「あいだちなくぞうれへたまふ(周囲を気にしたりする様子などなく訴える:「うれへ」は心情や事情を訴えること。後に一般化する、「うれひ(憂ひ)」(心配する)とは少し意味が違います)。