◎「ひひり(沖り)」(動詞)

「ひいひいり(日射日入り)」。日(ひ)を射(い)、日(ひ)に入(はひ)る、ということですが、「日(ひ)を射(い)」は、日(ひ)を目標としてこれを目指し、ということであり、日(ひ)が太陽の場合、日(ひ)に入(はひ)る、とは、眩(まぶ)しく、見えなくなることであり、「ひいひいり(日射日入り)→ひひり」は、空高くあがることを意味する。「日(ひ)」が生活単位たる一日を意味する場合、「ひいひいり(日射日入り)→ひひり」は、次々と時空を移動していくような状態になることを意味する。

『類聚名義抄』では「沖、翏、𦒢、翥、𦆖、次」などが「ヒヒル」と読まれている。「沖(チュウ)」(「冲」は同字と言っていい)は『説文』に 「涌搖也」とされる字。「翏(リュウ)」は「高飛也」、「𦒢」は俗に「翺(コウ)」であり、「翺(コウ)」は「翔也」、「翥(ジョ)」は「飛舉也」、「𦆖」は『説文解字』で「纏也」とされ、右側の旁(つくり)は『説文』に「尞(リョウ)」であり、「尞(リョウ)」は「柴祭天也」とされる字。祭事において柴を高く積みあげ、これ焚き上げなどもしたのでしょう。「次(シ)」は『説文』に「不前不精也」とされ、「不前不精也」は中国の書に「不前 是次於上也,不精 是其次也」と説明される。つまり、高くあがることであり、つぎつぎと移りゆくことでもある。

「(その馬は)壮(さかり)に及(いた)りて鴻(おほとり)のごとくに驚(のぼ)り、龍(たつ)のごとく翥(ひひ)り…」(『日本書紀』)。

「搏風迅羽 日を累(かさ)ねて空に沖(ヒヒル)」(『三蔵法師伝』巻第九(承徳三(1099)年点))。

「すべて此みねは。天漢の中に沖(ヒイリ)て人衆の外にみゆ。眼をいたゞきて立。魂恍々とほれたり。 幾としの雪つもりてかふし(富士)の山いたゝき白き高ねなるらん」(『海道記』)。

「物有りて綿の如くして…………則(すなは)ち風に隨(したが)ひて松原と葦原とに飄(ひひ)る」(『日本書紀』:「飄(ヒョウ)」は『説文』に「回風也」とされる字)。

 

◎「びびり(臆り)」(動詞)

「ビひびいり(備罅入り)」。「備(ビ)」はあらかじめ用意すること。「ビひびいり(備罅入り)→びびり」すなわち、その「備(ビ)」に罅(ひび)が入っている、とは、あらかじめの準備が不完全であったり欠陥があったりし現在として現れた現実への対応に自信ある対応ができなくなること。金銭の出し惜しみやもの惜しみをそのように表現することもある。21世紀においては、この語は、気後れする、おぢけづく、といった意味で言われているように思われます。振動する→(怖さで)震える、という意味の「びびり(震り)」の意味も複合したということか。

「あいさつに男のびびる娵(よめ)の礼」(『俳風 柳多留』七編)。

 

◎「びびり(震り)」(動詞)

「ひ」の影響浸透による「ひり」。濁音により強意により「びり」。連音の持続により「びりびり」という、浸透影響を表現する擬態がありますが、それがそのまま動詞化し「びりびり→びびり」。振動させるような浸透影響が起こっていることを表現する。語尾E音の「びびれ」(自動表現)もある。

「鑵子の蓋のびびる樽拍子」(「雑俳」『和国丸』:「鑵子の蓋」は、やっかんのおほひ、か)。