「はさせいひき(『は』させ射弾き)」。「はさせ」の「は」は、「はり(墾り)」「はれ(晴れ)」などにある、変化出現を表現する情動的な発声であり、文法では、感動詞、と言われる「は」。「させ」は使役表現。この「はさせ」が強意化し「はっ」のような音になりつつ「はぜ」のような音になりつつ「はぜい」が「はず」になる。「はさせい(『は』させ射)」。『は』とさせ射(い)、とはどういうことかというと、「『は』とさせ」とは、『はっ』とするようななにごとかが瞬発的に起こる。瞬発的な変化出現がある。そうした「い(射)」が起こっている。それが「はさせい(『は』させ射)→はず」。「ひき(弾き)」は、「楽器をひく」のそれであり(→「ひき(引き)」の項)、感覚的進行が時間進行として現れる。「はさせいひき(『は』させ射弾き)→はじき」、瞬発的な変化出現として直線進行させ時間進行を感じさせる、とはどういうことかというと、これは、弓に弦を張り、その弦を、なにかを射るかのように引き、引くことにより元に戻ろうと反発していた力をある瞬間解放し瞬発的な動きと残響を感じさせる振動を生じさせることです。つまり、弓で、なにかを 射るわけではなく、矢も装着しないが、射たかのような操作をすること。それが「はじき(弾き)」。弓の弦以外でおなじような動作をすることも表現する。「指で玉をはじく」(指で玉を跳ね飛ばすような動作をする)。社会的に、なにかを「はじく」と言った場合、それを除外することを意味する。
「陸奥(みちのく)の 安達太良(あだたら)真弓(まゆみ) はじき(波自伎)おきて せらしめきなば 弦(つら)はかめかも」(万3437:この歌。一般に。「はじき」を「はづし(外し)」の意に解し。「せらし」を「そらし(反らし)」の意に解し(東国の方言だという)、弓の弦(つる)を外(はづ)したままにして(弓を)反(そ)らせたままにすれば弦(つる)はかけられるだろうか、といった、意味のよくわからない解釈がなされている。この歌にかんしては「はき(履き・佩き・帯き)」の項(8月8日)。
「弓弾 ……ハジク」(『類聚名義抄』)。
「撥 ……ハラフ スツ ノソク………ハシク」(『類聚名義抄』)。
「碁盤(ごばん)の隅(すみ)に石を立てて弾(はじ)くに、向ひなる石を目守(まぼ)りて弾(はじ)くは、当(あ)たらず、わが手元(てもと)をよく見て、こゝなる聖目(ひじりめ)を直(すぐ)に弾(はじ)けば、立てたる石、かならず当(あ)たる」(『徒然草』)。
「心得つ雁食はむとて若党が老いたる者をはじきだすとは」(『古今著聞集』)。