仏教の成り立ちと、官僚制には意外な類似点がある。
仏教は、バラモン教のカウンターとして出発した。
バラモン教の発祥はインドである。
仏教も同じくインドである。
バラモン教は魂の階層性という概念をもち、
魂は前世の行い(カルマ)で輪廻するものであると
した。
つまりは、生まれながらにして、
「貴い者」と「卑しい者」に別れるというのが根本の
テーゼであり、「卑しい者」は現世で苦しむことで、
カルマを浄化し、来世でより高い階層へ登ることが
至上命題である。
最上位の階層は、バラモン(司祭)である。
かれらは呪術を生業とする。
仏教はこれを否定して始まった。
魂の存在自体を否定した。
それによって階層性、生まれながらの差別という
概念を否定した。
その代わり、人間の悟性(理性)による
解脱。迷妄からの解放をといて、それによる知的働きに
よって輪廻という迷妄から抜けだせと説いた。
仏教は、バラモンの特権を激しく攻撃した。
曰く、バラモンは司祭を司るものであり、
いうなれば、現世のジャッジを司る権力がある。
呪術はそれを知る者だけの秘術であり、
それは権力の源となった。
権力は腐敗を生む。
翻って、現代の社会はどうだろう。
高度に法治が進み、行政はマニュアル化が進んでいる。
その結果、政治は、そのマニュアルを読みこなせるものだけの
秘術となり、それは権力の源となった。
呪術は、法律と名前を変えた。
バラモン司祭は、官僚に姿を変えた。
権力は腐敗を生む。
現代に新たな仏教は現れるだろうか?