雲出流 最終回 | 出雲@AGO★GOのブログ

出雲@AGO★GOのブログ

出雲を愛する人のための情報源

最終章 国譲りの真相
4 新たな可能性

 一行は、松江市街に向けて元来た道を引き返した。ちょうど出雲国庁跡に差し掛かった所で車は左折し、正面の森の前の空き地にインベさんは車を寄せた。

 森の茂みに沿った参道の途中に急な石段があり、登り切るとすぐ目の前が神魂神社の本殿だった。
「この本殿は日本最古の大社造りで国宝に指定されちょる。主祭神はイザナミとイザナギ、神魂という名は、神坐所が転じてなった説、イザナミとイザナギが結ばれたことから、神結びが転じた説など様々じゃ」
 インベさんが神社の概要を説明した。四人は、境内を巡り始めた。
「これだけ古いお社なのに、式内社ではないのは、何故ですか?」
 イオリが真意を尋ねた。式内社とは、927年に編纂された延喜式の神名帳に名が残る神社のことだ。
「イオリくんは今日も鋭い質問をするのう」
 インベさんがイオリの知識に感心しながら続けた。
「ここは大庭という地区じゃが、出雲国庁の西側に隣接しちょって、元々出雲国造はここに居住していたんじゃ。この神魂神社は、国造宅のいわば邸内社だったと言われちょる」
「何故、邸内にお社を建てたんですか?」
 今度はマコトが尋ねた。
「出雲国風土記では、この一帯を意宇郡と言うんじゃが、意宇の神事は、さっき行った熊野で執り行われちょった。と言っても今の場所ではなく、昔はもっと山奥にあったんじゃ。神事の中で最も重要なのが新嘗祭で、旧暦の十一月末に執り行われるんじゃが、その時期の熊野は、雪に埋もれている可能性があった。だけん、熊野の逢拝所として、この社は創建されたんじゃ。普通の人は参拝できない邸内社じゃったから、延喜式の神名帳にも、出雲国風土記の神社帳にも記載されちょらん訳じゃ」
 インベさんが詳しく説明をした。
「じゃあ何故、熊野大社の主祭神であるスサノオではなくて、イザナミが祀られているんですか?」
 イオリがさらに突っ込んだ質問を投げかけた。
「そげ言われーと何でかのぉ?確かに出雲国造神賀詞でも、スサノオとオオクニヌシの二神の名を冒頭に掲げちょるから、出雲国造家がイザナミを主祭神とする可能性は低いのう」
 インベさんも不思議がった。
「でも、さっき行った熊野大社にはイザナミも祀られていましたよね。スサノオの偉大な母として祀られている可能性もあるわ。それに境内にある摂末社には、熊野社もあるし、そこにスサノオが祀られているんじゃ・・・」
 マコトが正論を説いていると、
「ちょっと待った。それはむしろ逆かもしれんばい」
 今まで黙っていた一真が口を挟んだ。
「どういうこと?」
 マコトが自分の話を阻まれたことにイラっとして、一真に迫った。
「境内の熊野社は、社の造りが入母屋造りっちゃけん、紀伊の熊野大社を祀っていると思うったい。熊野本宮大社には、スサノオもイザナミ・イザナギも祀られとる。ばってん、スサノオが祀られていると言われる証誠殿は切妻造りで、イザナミ・イザナギが祀られとる西御前・北御前は入母屋造りたい。やけん、境内の熊野社は、むしろイザナミ・イザナギが祀られとって、本殿の方にスサノオが祀られとった可能性があるったい」
 一真は力強く一つの可能性を説いた。
「でも、千木は女千木ですよ」
 今度はイオリが一真に問いかけた。
「そう言えば、この社は、物部氏の介入があって、千木が男千木から女千木に変えられたという説があったわ」
 インベさんが別の説を持ち出した。
「九州式。宗像大社の逆ったい。北部九州の影響がここにもあったちゅうこつたい」
 一真は右の拳を左の掌に、パンチをするように強く打ち付けた。
「確かに、面白い仮説ですね」
 マコトは一定の理解を示した。すると一真は、さらに何かを思いついた。
「待てよ。昨日の夜、日御碕神社の千木の話をしたっちゃけど、確かあそこは、上の宮が女千木で、下の宮が男千木だったばい」
「ええ、主祭神と千木の削ぐ向きが逆さまになっています」
 イオリが一真の言葉を受けて応えた。
「オレは、日御碕神社には詳しくはなかばってん、こうは考えられんと」
 一真は、腕を組んで持論を展開した。
「出雲大社の摂末社の千木は、祭神の性別に係わらず全て男千木、つまり出雲式たい。日御碕神社も、最初は上の宮と下の宮の両方とも出雲式の男千木だった。ばってん、九州に国譲りをして以降、宗像三姉妹を祀るという名目で、上の宮を九州式の女千木に変えたったい」
「なるほど、千木の定義を出雲式と九州式に分別するならば、その可能性もありますね」
 マコトは一真の洞察力に感心した。
「また一歩、近づいたかも」
 イオリは一真の説に期待を寄せた。
「まあ、推測するのは勝手だども、現在祀られちょうイザナミとイザナギにも敬意を払わんといけんぞ」
 インベさんは盛り上がる三人に釘を刺した。
「おっしゃる通りですね」
 マコトたち三人は姿勢を正して国宝の本殿を見上げた。
「ただ、残念ながらアシナヅチの影は、ここにはないのう」
 インベさんが申し訳なさそうに三人に告げた。
「一歩前進ということで、次行きましょう」
 イオリが明るく応えた。
「インベさん、人気の八重垣神社はどうですか?主祭神がスサノオとクシナダですよね」
 ふいにマコトが次の行き先を提案した。
「あそこはダメじゃ。本物の八重垣じゃないけん」
 インベさんは、首を横に振って強く否定した。
「ばってん、元の名の佐久佐社は、出雲国風土記にも記される由緒ある古社ですたい。固定観念に囚われてはダメですばい」
「逆に気が付いていないことがあるかもしれませんよ」
 一真が言うことを、イオリが息を合わせてフォローした。
「そう言われーと、昔あそこで、アマテラスを見たような・・・」
 インベさんが、右手を顎に押しつけて、首を傾げて考え出した。
「えっ?」
 三人の驚きの声が揃った。
「とりあえず八重垣神社に行ってみましょう。ここまで来たら、みんなの納得がいくまで調べましょうよ」
 マコトが珍しく感情的になった。四人は社殿に一礼をして、急な石段を降りて、急いで車に乗り込んだ。

最終話 誰の仕業?

 神魂神社の参道前の細い道から、田畑を縫うようにインベさんは車を走らせた。ものの5分で一行は八重垣神社に到着した。
 四人は奥の駐車場から小走りで神社の正面へと向かった。境内は、神在祭の時期のため、平日でも大勢の若い女性たちで賑わっていて、本殿前には参拝を待つ人々で行列ができていた。
 本殿の右側を見ると、社務所の前にも行列があった。こちらの方は、裏山にある鏡の池に浮かべる占い用の和紙を求める列だった。
「インベさんの記憶にあるアマテラスはどこにいるの?」
 マコトが声を張った。
「確か、宝物庫に展示されちょったような」
 インベさんの記憶は曖昧だった。
「宝物庫ってどこ?」
 イオリが辺りを見回した。
「あれたい!」
 一真が社務所とは反対の方を指さした。そこには、小さな倉がひっそりと建っていた。
「人の気配がないんだけど、本当にあそこなの?」
 マコトがイメージしていたものとは違っていた。
「あげだ。あそこに間違いない。あの中に壁画が置かれちょる」
 インベさんの記憶が少しずつ戻って来た。
「その壁画って、確か国立博物館の特別展で見たわ」
 イオリが声を上げた。
「オレも見たったい」
 一真が再び同調した。
「その壁画に描かれていたのは、スサノオとクシナダだったはず」
「そうたい。特別展の最後に印象的に飾られとったばい」
 イオリと一真は、顔を見合わせて確認しあった。
「じゃあアマテラスはいなかったてこと?」
 マコトが少し苛立ちをみせた。
「いや、壁画は確か三枚あったはずじゃ」
 インベさんが記憶を辿って補足した。
「宝物庫って中へ入れるの?」
 イオリが誰にともなく尋ねた。
「ここに200円を社務所で払えと書いてあるったい」
「よっしゃ、ワシが払って来ちゃーけん、ちょっと待っちょってごせ」
 インベさんは、そう言って急いで社務所に向かった。しかし、社務所には、別の目的の行列があった。インベさんは仕方なく、その行列の最後尾に並んだ。
「もう、じれったいなぁ。中はいったいどうなっているの?」
 マコトが残りの二人に問いかけた。
「私たちが見たのは、壁画というよりは、屏風のような設えだった」
「そうたい。絵の部分だけを壁から抜き取って、枠にはめて自立させとったばい」
「そう言えば、スサノオは少し困り顔をしていたような」
「そうそう、眉ば、下がっとったばい」
 マコトは早く壁画を見たくてウズウズしていたが、なんだかんだ仲が良さそうなイオリと一真を見て、余計に苛ついていた。そうこうしているうちに、ようやくインベさんが戻ってきた。
「靴を脱いで、勝手に入ってごしないと」
「そんな適当な所に、本当にお宝はあるの?」
 マコトはまだ疑っていた。

 四人は宝物庫の入口で靴を脱いで、右側の小さな引き扉をスライドさせて、インベさんを先頭に、マコト、イオリ、一真の順に、一人ずつ中へと入って行った。
 薄暗い宝物庫の中は、狭くて奥行きが全くなく、自立した三枚の壁画が壁に沿って並べられ、その前に人が一人通れるほどの通路があった。四人は通路に沿って、三枚の壁画の前に、横一列に並んで立った。
 四人は、一瞬言葉を失って、呆然とその場で固まった。
「これはまさに国譲りの交渉の光景ですばい」
 一真が沈黙を破って、ようやく言葉を口にした。
「ワシたちが今朝、予想しちょった通りの展開じゃ」
 インベさんがそれに応えた。
 三枚の壁画は、真ん中にスサノオとクシナダ、向かって左側にアシナヅチとテナヅチ、そして右側にアマテラスとイチキシマヒメが、それぞれ二人一組となって描かれていた。
「確かに、アマテラスがイチキシマヒメを連れて出雲にやって来て、スサノオ夫婦と親方夫婦に対して、相続権は私達の方にあると主張しているシーンだわ」
 イオリが状況を飲み込んで言い放った。
「つまり、これが一回目の国譲りが成立した場面ってことね」
 マコトも納得した。
「状態が悪いから親方夫婦の表情はわからないけど、スサノオは困った顔をしているし、クシナダは怒ったように見える。そして、アマテラスはしたり顔をしているという、三者三様の表情をしているわ」
 イオリは絵の表情まで読み取った。
「これを描いた人は、この情報を密かに伝え聞いていたんですね」
 マコトは作者の状況を想像した。
「この壁画は、893年の宮廷画家・巨勢金岡の作品とされちょるらしい」
 インベさんが社務所で得た情報を三人に知らせた。
「893年?道真が『三代実録』の編纂委員を命ぜられた年たい。ひょっとすると、道真の危機感がこの壁画を生んだ可能性もあるばい」
 一真の左側に立つ三人が、一斉に一真の方に顔を向けた。
「道真は、古代出雲の真実を、再び藤原氏に揉み消されそうになったばってん、どこかに何かを残そうとしたったい」
 一真は、太宰府の道真を想い、説を論じた。
「巨勢氏は、藤原氏の台頭で、政治の中枢から追いやられた立場だから、依頼者と製作者の思惑が一致したかもしれませんね」
 イオリは一真の意見に乗っかった。
「たしか道真と金岡は親交があったはずばい」
 イオリのフォローで一真は自信を深めた。
「この壁画は、本殿内部の神座の背面と両側面に描かれちょったそうだけん、神職以外の誰の目にも触れることはなかったわけじゃ」
「朝廷にバレると、没収されたり、焼却されたりするばってん、そこならば後世に伝えられると考えたったい」
「なのに何故か公開されても、これが国譲りの交渉の場面だと気が付く人は、誰一人いなかった」
 イオリが不思議がった。
「世間の誰もが、記紀の呪縛に囚われとったばい」
「それだけ不比等の演出が巧妙だったってことじゃ。忌部家の伝承にもあらせんかった」
 男性陣は不比等のズル賢さに舌を巻いた。
「でも、マコトが会った不比等は、アマテラスが強引に出雲を奪ったのではなく、友好的に話し合ったのだと伝えたかったんじゃないかしら」
 イオリがマコトを見て言った。
「きっとそうね。不比等が伝えたかったことが、ようやくわかった気がするわ」
 マコトはホッとした表情をした。
「あっ、そう言えば、男千木」
 思いついたように、突然イオリが声を上げた。
「男千木がどげしたんじゃ?」
 インベさんが、イオリの大きな声に驚いて尋ねた。
「宗像大社の本殿の千木が、男千木だったんです」
 イオリはインベさんに理解を求めた。
「そうたい。イチキシマヒメは出雲の正当な後継者になったから、それを知ら示すために、あえて辺津宮本殿の千木は、出雲式の男千木になったったい。そこまでは、気がつかんかったばい」
 今度は一真がイオリをフォローした。そして二人は、手を取り合って喜んだ。
「出雲は日向だけじゃなくて、日本全体と仲良しだったんですよね」
 マコトが仲の良い二人を見ながら、優しい笑顔でそう言った。
「そげじゃのう。スサノオの目的は、征服ではなくて大陸からの技術の伝搬じゃ。若い頃は血気盛んじゃったが、歳を重ねて子どもを持って、だいぶ丸くなったんじゃのう」
「スサノオ一族は、出雲から流れ出て、九州、吉備、大和、紀の国そして越の国と、あらゆる国に幸せを広めたんですね」
 マコトは、インベさんの話を受けて、しみじみと語った。
「まるで出雲で生まれた雲が、国中に広がって行く様じゃのう」
 インベさんの言葉に、マコトの脳裡には、あの出雲大社の八雲山の風景が去来した。そして、八雲山で舞うトンビのように、体がゆらゆらと浮いてきて、目の前に二人一組でコの字に座った六人の姿が現れた。

 マコトの向かい側には、スサノオとクシナダ、左手にアシナヅチ夫婦、右手にアマテラス親子が座っていた。マコトは、今の状況をみんなと共有したくて、思わず両脇にいたインベさんとイオリの手を取った。それに合わせて、イオリも隣の一真と手を繋いだ。
 手を取り合って、横一列に並んだ四人は、3Dホログラムのように、立体に浮き上がる目の前の光景に驚嘆した。
「マコト、私にも見えるよ」
 イオリはマコトの手を握りしめた。
「ほぉ、アマテラスとイチキシマヒメが本当に出雲に来ちょらいわ」
 インベさんは腰を抜かしそうになった。
「凄かぁー」
 一真は、ただ感嘆するだけだった。
「不比等の謎解きは、最後はスサノオ本人が導いてくれたんですね」
 マコトは、怒っているクシナダを、困り顔で見ていたスサノオが、その困り顔のまま、一瞬自分と目を合わせたような気がした。マコトは、自分が見た白昼夢は、スサノオが仕掛けたマジックだったと確信した。

 四人は、半ば放心状態で薄暗い宝物庫の中から外へ出た。その時、ちょうど差してきた木漏れ日を、手で遮りながら眩しそうに空を見上げた。青空に浮かんだ大小いくつかの羊雲が、ゆっくりと流れていった。
「そう言えば夢の中で、オオドシがオオクニヌシに、これから色々大変だと言っておったばい」
 一真が昨晩の夢を振り返った。
「おそらく、その後の出雲には、幼いイチキシマヒメではなくて、姉のタギリヒメがやってきたんですね」
 一真の言葉を受けてイオリは、タギリヒメが出雲にやって来た理由を推察した。
「そこでオオクニヌシは、上手いこと振舞って、タギリヒメといい関係になり、出雲の王の座をキープしたんじゃ」
 インベさんもイオリに続いた。
「さすが、オオクニヌシは女性相手には抜け目がないですね」
 マコトも感心して同調した。
「そんなオオクニヌシも、ニギハヤヒ以降の大和勢に、再び国譲りを迫られたわけたい」
「そして、出雲国風土記に記されちょるように、出雲以外の領地を手放したんじゃのう」
 四人は、その後のオオクニヌシと二度目の国譲りについて語り合った。

 参拝を済ませると、インベさんがマコトに、今後について問いかけた。
「ところで、この情報をあんたやちゃどげするかね?」
「どうもしませんよ。半分私の夢の話ですから、誰も信じてくれませんよ」
 マコトは情報の公開を否定した。
「世紀の大発見たい。もったいなかぁ」
 一真の意見は反対だった。
「小野さんは、夢とは言え、ご自分の推測が正しかったことがわかったわけですから、自信を持ってこれからの研究を進めてください、ねっ」
 イオリはマコトの意見を尊重した。
「ワシも忌部家として守っちょったことを、ワシの代でバラすわけにもいかんけん、このことは黙っちょくわ」
 インベさんもマコトの意見に賛同した。
「あっそうだ。みんなで鏡の池に行きません?」
 ふいにマコトがそう言って、森の方に向けて歩き出した。三人はそれに従った。

 八重垣神社は、住宅地からすぐの場所にあったが、東側には、うっそうとした森が迫っていた。その森が神域になっていて、結界が張られていたが、森の中にある鏡の池までは誰でも自由に行くことができた。その鏡の池は、和紙に硬貨を乗せ、水面に浮かべて恋占いをする人気のスポットだった。
 マコトは池の前まで行き、お財布から百円玉を取り出した。そして池を覗き込むと、不比等から貰った巻紙を広げて、その百円玉を乗せ、水面に浮かべて手を合わせた。
「あっ!」
 イオリと一真が思わず声をあげた。インベさんは腕組みをして、黙って見つめていた。

 流れのない池のはずなのに、不比等の巻紙は、ゆらゆらと揺れながら水面に大きな円を描いた。しばらくして、静かに、静かに水底に沈んで行った。
「全てが水の泡ったい」
 一真が肩を落とすと、イオリがその背中にそっと手をそえた。
「水に流しちゃいました」
 マコトが振り返って、嬉しそうに笑った。
「ワーッハッハッハッハ」
 インベさんの笑い声が、静寂を破って、森じゅうに響き渡った。
               
おしまい

 

 

八重垣神社の壁画は、社伝では893年の宮廷画家・巨勢金岡の作品とされていますが、壁画が描かれた壁材が年代測定の結果13世紀のものだと診断されました。私は、現在のものが13世紀に補修された可能性もあると考えています。
その理由の一つは、菅原道真の肖像画とアシナヅチの壁画の衣装がそっくりだという点です。
道真の時代にアシナヅチ達が描かれた可能性があると思います。


もう一つは、誰が言い出したのかはわかりませんが、893年に道真と親交のある巨勢金岡が描いたと伝えられていることです。
誤りだったとしても、偶然が劇的すぎます。ですから私は、たとえ妄想でも、元々巨勢金岡が描いたものが、13世紀に修復されたと思うわけです。

13世紀の作品だとしても、この作品のテクニックは素晴らしいです。以前ブログでも紹介しましたが、女性の表情と衣装の細かい描写が秀逸です。
アマテラス

アイラインや口元、頬の表現が今風です。

柄

PCでリライトしてみると
模様
色の重なりの濃淡が綺麗に描かれています。

そして、この壁画は2020年の東京国立博物館特別展「出雲と大和」でトリを飾った展示であることも事実です。
そんな素晴らしい作品を、八重垣神社を訪れる方のほとんどが、見ないで帰っているのが残念でなりません。
そんな想いも込めて、この作品を仕上げました。


最後のロケーションは本殿

神魂神社
個人的には、松江の最大のパワースポットだと思っています。

天鏡社
八重垣神社 佐久佐女の森

八重垣神社には、旅行雑誌には載っていない魅力がたくさんあります。
たぶん私のブログの中で、出雲大社と並んでネタが豊富です。
妄想ですが、道真と金岡のネタは新発見でした。