2020年はオリンピックイヤーだけか? 何かが起こる予兆に身が震える! | 経営の勘どころ・つかみどころ

2020年はオリンピックイヤーだけか? 何かが起こる予兆に身が震える!

 2020年(令和2年)は、1964年(昭和39年)以来、二度目のオリンピック・パラリンピックが開催されます。日本人としても成功を祈りたいものだが、ここにきて開催の先行きに暗雲が漂いはじめました。昨年末から今年に入り、中国湖北省・武漢市で発生した「新型コロナ・ウイルス」が猛威を奮い始めたのである。現時点では中国国内の感染者7万人を超え、死者数も2000人を突破している。感染は今のところ終息の様子は見られず、世界各地に感染が広がり続けている。日本でもクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)の乗員・乗客を中心に多数の感染者が確認され、その後北海道をはじめ全国に感染が拡大している。隣国韓国も日本以上の感染拡大が報道されている。このような感染症が終息するには最低でも半年程度の期間を経る必要があるとの専門家の見方があるので、オリ・パラが開催される予定の7月では、まだ警戒期間中ということになりそうだ。世界中からオリ・パラ観戦者を迎え入れることが果たしてできるのか?甚だ疑問である。今後、国内で感染爆発(パンデミック)が認められれば、海外の観戦者の足も遠のくであろうし、競技者からも出場辞退者が相次ぎ、祭典開催ができない事態も想起されるのである。早期の終息を祈るのみである。

 

 さて、2020年は年明け早々から衝撃のニュースが世界を震撼させた。その一つがアメリカ・トランプ政権によるイランの革命防衛隊司令官(ソレイマニ氏)の暗殺である。イランはこれに激しく反発して、即座にアフガンの米軍基地をミサイル攻撃した。中東の火薬庫に火がつきそうな軍事危機に世界は瞠目したのである。幸いにもその後、両国とも自制的な態度を見せてはいるが、アメリカはホルムズ海峡などの海域を防衛するとして、有志連合を呼びかけ、日本も、これに対応して、哨戒機と自衛艦を独自にオマーン湾に派遣した。

 中東地域は世界の列強が複雑に絡み合う最も危険なエリアである。古くは、第一次中東戦争・第二次中東戦争が勃発し、日本は二度の石油ショックに見舞われた。その後もイスラエルとパレスチナの激しい抗争、イラン・イラク戦争、旧ソ連のアフガン侵攻やイラクのクェート侵攻。これを引き金とする湾岸戦争では、日本は当時90億ドルの戦費を負担させられた。その後も、9.11のワールドセンタービルなどの同時多発テロが米国内で発生し、報復的なアフガン戦争がアメリカ主導で遂行された。さらに、IS国が流星のごとく勃興し、アフガン、シリア、クルド居住地域に浸透し始めるとともに、シリアの内戦が勃発した。その後は各国の掃討作戦が功を奏し、ようようにしてIS国は壊滅したものの、今では、米国とクルド連合にトルコが反発し、それを見て、ロシアがシリア・トルコに接近。中国も密かにイランと関係を強めている情勢にある。

 

 中東は世界中へ石油資源を供給する重要地域であることは今も変わらない。日本にとっても経済の生命戦の一つである。これまでは米国がこの地域を防衛する確固たる存在であったが、トランプ政権下では、米国自身はこの地域の石油に依存する度合いが薄れつつある。シェールガス革命で、米国は国内の石油需要を国内生産で充足できるようになり、逆に石油天然ガスを輸出する国になっている。中東を守る必要性が薄れているのだ。それ故、この地域の防衛は、関係国全体で行うべきとして有志連合を呼びかけているのが米国の本音である。日本としては、今後の成行に目が離せないであろう。

 

 中東情勢も心配であるが、東アジアも昨年来、政治情勢が流動的で不安定化してきた。香港における自由・人権・民主主義を求める学生・民衆によるデモは、世界の耳目を惹きつけている。台湾でも独立指向の強い与党民進党が総統選に勝利し、蔡英文氏が総統に再選された。米国も最近は中国の目をあまり気にせずに台湾防衛のために軍備増強をバックアップし始めた。日本と韓国の慰安婦・徴用工をめぐる対立は、日本によるホワイト国はずしにつながり、韓国はGISOMIA破棄問題や日本製品の不買運動や観光自粛を国民に呼びかけており、双方の反目は相当長引きそうな様相である。今年は新型コロナを含め、何かを引き金として世界情勢が一変し、経済や安全保障面で一気に緊迫化するように思える。

 

 世界経済といえば、米中貿易戦争の行方も懸念される。2018年7月に勃発した米国と中国の関税争いは、今年で足かけ3年目に突入した。足もとでは、米中両国とも牽制気味の合意をして、一部関税引き下げの姿勢を見せてはいるが、双方が確実にこれを実行するかどうかは疑わしい。この両国の貿易戦争の背景には根深い覇権国争いが存在しているからだ。

 これから先も両者の対立は長く続くとみるべきだろう。現在の覇権国米国を凌ぐため、中国は「一帯一路」の安保経済絡みの国家戦略を打ち出し、中央アジア・東欧・アジア・アフリカ・南太平洋の島嶼国など、広範囲な地域にその影響力を及ぼそうとしている。それを阻止するため、日米は「自由で開かれたインド太平洋構想」を旗印として、価値観を共有する国・地域に対して経済・安保の連携と協力を呼びかけ、対抗軸を構築しようとしているのは、既に周知のとおりである。どちらの陣営に加わるかという構図は、まさにインド・太平洋地域において、中国を相手にした新冷戦構造ができつつあるように思われる。

 既に主要国では水面下で新軍事構想が推し進められている。サイバー防衛・宇宙軍の創設・ミサイル防衛の新技術開発・超音速ミサイル配備等が静かに進行している。ロシアに対抗して米国は小型核兵器を弾頭とするSLBMを原潜に実戦配備し始めた。5G覇権も、単なる通信技術の競争ではなく、ネットを制することが21世紀の覇権を握る鍵になるからである。アジアは、米中日の対立を軸にロシア・北朝鮮・韓国・台湾・ASEAN10カ国・豪・NZ等が複雑に絡み合う時代に入ったことを、令和2年は誰の目にもハッキリと見えるようになるであろう。

 

 ヨーロッパでも、今年は大きな動きがあるだろう。英国が1月31日にEU離脱を正式に決定した。今年の年末までにイギリスは、EUとの間で離脱手続きを合意する必要がある。合意に失敗すれば、イギリスと大陸の間の人や物の自由な動きが停止され、関税・入管の壁が両者の前に立ちはだかることになる。そうなれば政治的にも経済的にも大きな混乱が生じるのは確実で、これを回避できるか否かは、今年一杯の両者の動き方で決まるのである。日本も世界も英国・EUの交渉の行方を注視せざる得ないであろう。

 加えて、今年は5GやAIに代表されるデジタル技術を中心とする動向も注目しなければならい。特にブロックチェーン技術を駆使したデジタル通貨元年になりそうなのが令和2年である。周知のようにFacebookがデジタル通貨「リブラ」構想を打ち上げた。これに驚愕したのがFRB(米連邦準備理事会)やECB(ヨーロパ中央銀行)である。この構想が発表された直後から、日本銀行を含む主要国の中央銀行が集まり、世界の金融市場に混乱を引き起こす重大リスクが有るとして、なりふり構わず「リブラ」潰しを試みた。民間企業の一つに過ぎないFacebookは、さすがにこれには抵抗できず、リブラ構想は当面凍結することを表明した。

 しかし、主要国の中央銀行が束になって警告しても、それを無視する国がある。中国である。中国は、今年中に「デジタル人民元」を発行すると表明し、実行に移そうとしている。このデジタル人民元が実際に運用されるようになれば、送金コストが安く、手続きも簡単、時間的な制約もないデジタル人民元のメリットを享受しようと、世界中の多くの貧困国が、人民元に裏付けられた中国元のデジタル通貨を使うようになる可能性がある。ドルを基軸とする世界の金融市場の秩序は、デジタル通貨をテコに、人民元にやがてとって代わられることになるかも知れない。そうなれば、アメリカは世界経済の主役の座を中国に明け渡すことになるであろう。ここでも米中の覇権争いが展開されようとしているのだ。今年は、デジタル人民元に対抗するため、日米欧の中央銀行が連合して「デジタル通貨X」が誕生する可能性が高い。そうなれば、世界の決済システムは一気にデジタル化され、主要国はもとより世界中で「キャッシュレス経済」が誕生する年になるかも知れない。

 どうなる令和2年!背筋が知らずしらずに・・・ブル!