男女の平均定命がついに相続税の財産評価に採用されることに! | 経営の勘どころ・つかみどころ

男女の平均定命がついに相続税の財産評価に採用されることに!

2018年の日本人の平均寿命が更新された。女性87.32歳・男性81.25歳とそれぞれ過去最高値を更新した。厚労省が発表した簡易生命表で分かったことである。


 これによると女性は4年連続世界第2位、男性は前年に続き世界第3位となっているという。この平均寿命とは、その年に生まれた0歳児が何歳まで生きられるかを予測した平均値を示すもの。女性は前年より0.05歳、男性は0.16歳伸びたようだ。平均寿命が延びたのは、女性では「脳疾患や肺炎」による死亡率が、男性では「がん」による死亡率がそれぞれ改善されたと分析されている。

 

 同省は2016年時点での健康寿命(介護や寝たきりにならず生活できる寿命)も算出しているが、これが以外と短いのだ。日本人の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳という。高齢社会の代表選手たる団塊の世代がこの健康寿命を超えるのも4年から6年後のことである。まさに2025年問題の本質とは、団塊の世代の全員がそろって健康寿命ゾーンを通過して、周囲の介護を受けたり寝たきりの生活に突入したりと、社会全体に負担を強いる状態になることを意味する。かくいう筆者自身も団塊の世代のど真ん中で生息している身であり、古希を迎えた頃から、心のどこかに後ろめたさを常に抱えるようになってしまった。これもわが宿命と諦めるしかないのだが、超高齢社会を迎えた日本では、法律にも変革が訪れている。

 

 実は今年から施行された改正民法(相続法)において、「配偶者居住権」という権利が創設されたのだ、これに伴い、相続税の世界でも、配偶者居住権やその敷地の評価について、この平均寿命が採用されることになった。配偶者居住権とは、残された一方の配偶者が生涯にわたって自宅に住み続けることできる権利のことをいい、この権利は相続財産として遺産分割の対象となるように法律整備が行われたのである。この権利は建物の所有権とは別に登記され、第三者対抗要件を備える強力な権利である。しかも配偶者以外の相続人には相続できない配偶者にのみ付与される権利であり、配偶者の死亡により消滅するという権利である。
 

 相続税法ではこれに対応すべく、その評価額の計算式に、配偶者の平均余命年数に基づく権利の残存年数の長短によって配偶者居住権を算出する法整備が手当てされた。しかもここでいう平均余命年数は、冒頭に記した「簡易生命表」ではなく、同省が5年毎に公表する「完全生命表」が採用されることになっている。課税上の弊害を排除するため、毎年公表される簡易生命表の使用をためらったものと推測している。


 いずれにしても、人の平均余命年数(平均寿命)が税金の計算で使われることになったという高齢社会の実相を心に留めて置きたいものである。