日仏の会社統治紛争が勃発か!? | 経営の勘どころ・つかみどころ

日仏の会社統治紛争が勃発か!?


日産のカリスマ経営者カルロス・ゴーン会長が、11月19日羽田空港にビジネスジェット機で到着した直後、東京地検特捜部に逮捕された。同時に日産の代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者も都内の車中で逮捕された。一般人には夢想谷しなかったショッキングな事件である。
 直接の容疑はまだ明らかにされていないが、報道を見る限り、自らの役員報酬を50億円(直近3年を含めると80億円)有価証券報告書に過少に記載した虚偽記載容疑ということらしい。今後、取り調べが進むにつれて容疑の全貌が明らかになるであろうが、経営不振から倒産の危機に直面した日産を救援する形で、平成11年に仏ルノー社が日産に資本注入し、同時に経営立て直しのために送り込んだのが、後にコストカッターと称されたカルロス・ゴーン氏である。


 日産の経営は、その後V字回復を遂げ、ゴーン氏は、同社の社長・CEOに登り詰めるとともに、仏ルノー社のCEOも兼任した。平成28年には日産が三菱自動車を傘下に納め、ゴーン氏は三社連合のトップに君臨することになり、文字どうり世界の自動車産業のカリスマ経営者と呼びにふさわし地位を獲得した。


 仏ルノーは日産の株式を43.4%保有しているという。現在ではルノーの利益の半分は日産が稼ぎ出していると云われているが、仏ルノーの大株主が仏政府である。経済面でもまた、ルノーが4万8千人の雇用抱えているという事実だけでも、日産は絶対手放せない金の卵である。近年、日産車の生産をルノー工場に移管させて、さら雇用吸収力を高めようとする動きが強まっていたと聞くが、一方の日産も、5万9千人の雇用を抱えている。日本政府にとっても、日産車の生産が仏政府の意向にそって、ルノー工場に移管されてしまっては、国内雇用に悪影響が出かねない。また、生産技術面でも、ルノーに吸い上げられてはという不安もある。


 ルノー・日産・三菱自の経営統合の動がささやかれ、日産サイドが警戒していたとの風聞もあり、今回のゴーン会長の逮捕劇は、日仏間の会社統治紛争の様相を呈しているとみてもいいのかも知れない。今後の推移に注目である。