画像検査も行う事なく、“認知症”だと決めつけてませんか?~認知症を疑ったら、MRIかCT検査を! | 「最後まで諦めない」~医師、時々作家、そしてランナー

「最後まで諦めない」~医師、時々作家、そしてランナー

医師であり、時々作家、そしてランナーである筆者が日々の出来事について徒然なるままに綴っております。「最後まで歩かない」事をレースでも、人生でも目指しております。

今日は木曜日です。私は山口市阿知須の病院に非常勤医師として働きに来ております。

「金沢守クリニック」は基本休診なのですが、夕方に創部の処置のために患者さんが1名受診されます。

本日の山口県西部、午前中はそこそこまとまった量の雨が降っております。お昼前から雨は上がり、次第に
天候は回復に向かっています。太陽が顔を覗かせており、気温も上がっていますので、春の気配を感じる事が
出来る一日になりそうです。

今朝も走りました。21キロを1時間36分43秒かけて走り、1302カロリーを消費しています。キロ4:36分のペースで
した。ラスト1キロはキロ4:20分まで上げています。2月の月間走行距離は284キロに達しています。

今朝は走り始めるのを躊躇うぐらいの雨は降っていました。しかし、「男のランは雨天決行」を信条としている私
です。

そして高校に自転車通学している長男が今日もこの雨の中を雨合羽を着込んで、今日も当然の如く学校に行く
と考えると、父親としては休足を選択する訳にはいかなかったです。勿論、長男は私の事を意識してませんが(笑)。

さて、昨日の「ためしてガッテン」をご覧になった方も多いかなと思いますが、見損ねてしまったという方のため
に、番組の内容を振り返ってみたいと思います。

笑顔が戻った! 認知症 治るタイプ大発見SP


一度発症すると治療が難しい認知症。「もう年だから…」と諦めてしまっている人も多いのではないでしょうか。
ところが、認知症を起こす病気にはいくつもの種類があり、その中には劇的に症状が改善する可能性がある
ものも…。

昨日取り上げられたのは「正常圧水頭症」という病気と「慢性硬膜下血腫」という病気です。この二つの病気は
適切な処置を施せば、劇的に改善する可能性があるようです。

早い人では、わずか1時間で効果が出るケースもあるそうです。それなのに30万人以上と推測される患者さん
のほとんどがきちんと治療を受けていないのが現状との事です。

まずは正常圧水頭症のケースから紹介します。

半年ほど前から物忘れと歩行障害が出てきたAさん(74歳)。症状は徐々に進み、明日の予定も記憶できず、
歩行も小刻みな歩幅でやっと歩く程度になってしまいました。

Aさんは一人暮らし。近くに住む娘さんは心配でたまりません。そこで脳神経外科で診察を受け、詳しく検査を
するために入院することになりました。

いよいよ検査開始、という時に医師が取り出したのは注射針。これをおもむろに背中に。脳の病気かと思ったら
検査は背中…。

しかも、この検査がこの後、驚きの回復を呼ぶことになるのです。2日後、再び病院を訪れると、そこには見違
えるようなAさんの姿がありました。

足はすいすい動いて歩く速度は2倍、お見舞いに来た娘さんといきいきとした表情で笑みを浮かべながら話して
います。

あの背中に針を刺す検査でこんなに改善しちゃったんです!いったいどういうことなんでしょうか?いったい背中に何の秘密があるというのか?

番組スタッフがこの分野の画像診断に詳しい医師のもとを訪れました。すると認知症状のカギとなるものがMRI
で見えることが判明しています。

早速スタッフの体を隅々までMRIで撮影してみました。その結果、なんとあるタイプの認知症の犯人が映っていたのです。

しかも背中だけでなく腰にも、頭にも。その正体は、「脳脊髄液」なのです。実は背中に針を刺した検査は、この
脳脊髄液を抜いていたんです。

私たちの脳と脊髄の周りは、この脳脊髄液で満たされ、まるで豆腐のようにプカプカ浮くことで周りからの衝撃に耐えられる仕組みになっています。

脳の内側にはこの脳脊髄液をためておく部屋「脳室」があります。ところが、何らかの原因で脳脊髄液が増えすぎてしまうと脳室を内側から圧迫、認知症を起こすようになります。

脳脊髄液の増えすぎが原因で起きるこの病気。特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう)と言います。

主な症状としては、歩行障害、認知障害、尿失禁の三つ。一般に認知症は治療が困難と言われていますが、この病気の場合は別。余計な脳脊髄液を抜くことで大きく改善する可能性があります。

治療は手術になります。細いチューブを通して脳脊髄液を腹腔に吸収させるのです。チューブは体内を通すので邪魔にはなりませんし、手術は1時間前後で終わることがほとんどです。

この病気の症状の1つとして歩行障害が出るので、脳と関係ない診療科へ行きがちです。さらに「もう年だから」「認知症だから」と諦めて、きちんと診断を受けていない人も多いと考えられます。

心当たりのある方は、確認してみてはいかがでしょうか。なお脳脊髄液を抜くことで治る可能性があるのは特発性正常圧水頭症が原因の認知症だけです。すべての認知症が治るわけではありませんのでご注意が必要です。

次に「慢性硬膜下血腫」について紹介します。

自宅のトイレの場所がわからないほどの物忘れ、周囲の呼びかけにも反応できないなど、まるで認知症のような症状が出るのに、実は全然違う病気があります。

それが慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)。頭をぶつけるなどして、頭蓋骨の内側に血液と脳脊髄液
の大きな塊ができて、脳が変形するほど圧迫されることによって発症します。

手術で血液と脳脊髄液の塊を除去すれば治りますが、やっかいなことが二つ。一つは、ほんの軽くぶつけただけでも発症することがあること。室内のかもいやタクシーの天井にぶつけた程度でも発症することがあるので、本人もぶつけたことを覚えていないケースもしばしばあるようです。

もう一つは、ぶつけた直後には何の異常も見られないこと。症状も出ませんし、CTなどの画像検査をしても異常
はなかなか見つかりません。

血液と脳脊髄液の塊は1か月~2か月ほどかけて成長するからです。その後、わずか数日の間に急速に症状が悪化するのが特徴ですので「おかしいな」と思ったら神経内科や脳神経外科を受診した方がいいようです。

症状が出てからでも間に合う病気ですから、心当たりがあれば、あわてず、速やかに受診しましょう。

もう一度お復習いしておくと、特発性正常圧水頭症の症状は
1.歩行障害
2.認知障害
3.尿失禁
以上の三つが3大症状で、特に歩行障害はほとんどの人に現れます。特発性正常圧水頭症の見分け方ほとんどの人に現れる歩行障害は、非常に特徴的ですので、見分ける手がかりになります。

足の幅が広い(肩幅くらい) 小刻みに歩く がに股 一歩目が出にくい 狭い通路や障害物があると歩幅が小刻みになる特発性正常圧水頭症が疑われたら神経内科や脳神経外科を受診した方がいいとの事です。

なお、特発性正常圧水頭症以外の原因で認知症になった場合、脳や背中から脳脊髄液を抜いても効果はありませんので、注意が必要です。

慢性硬膜下血腫の症状についてのお復習いです。
1. 頭痛
2.認知障害
3.手足のまひ
4.吐き気

どれもこの病気特有の症状ではありませんが、認知障害が出た時点で速やかに病院へ行くことが重要です。
「もう年だから」と放置しないことが大切です。神経内科や脳神経外科を受診した方がいいようです。

「正常圧水頭症」にしても、「慢性硬膜下血腫」にしてもCTやMRIといった画像診断がなければ、確定診断には
至りません。又、いずれの疾患も症状の根本的な改善を得るためには脳神経外科医による手術が必要です。

「認知症」という診断名を下す前に一度CTやMRIの検査も勿論ですが、脳神経外科或いは神経内科を受診し、
どのタイプの認知症なのかをはっきり見定めてから治療を受ける事が肝要であると感じました。

本人を診察し、家族のお話をお伺いする事は勿論大切な事です。しかし、何も検査する事なく、いきなり投薬を
開始するような愚を犯してはならないと感じる今日の私です。