宮古島ウルトラ遠足(とおあし)完走記:本編その二~マラソンは人生を変えないが、生き方を変える! | 「最後まで諦めない」~医師、時々作家、そしてランナー

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医師であり、時々作家、そしてランナーである筆者が日々の出来事について徒然なるままに綴っております。「最後まで歩かない」事をレースでも、人生でも目指しております。

【マラソンは人生を変えない、しかし生き方を変える】
昨日のブログでアマチュアアスリートの競技はマラソンに限らず、全てが家庭や仕事の上に成り立つものであり、
競技に対するトレーニングや、レースの完走経験、自己ベスト更新などで人生が変わることはないだろうと書かせて頂きました。

その後、何となく心の中がモヤモヤしていました。「走り始めてから、そしてレースに参加し始めてから確かに人生は変わってない。走る前も仕事に真摯に取り組んできたし、走っているからと言って手を抜いた事はない。でも
人生と言うほどの大袈裟な物ではないけど、何かが変わった。なんだろう?」と自問自答しました。

今朝の早朝、朝ランしていてその答えが出ました。変わったのは『生き方』でした。ウルトラを15日に走り終え、まだ少し痛みも残り、腫れも完全に引いていない右足を抱えながら、「何で俺は今日走るのか?1週間ぐらいは休んでもいいんじゃないのか?」と自身に問いかけながらのランニングでした。

次第に明るくなり始めた空を見ながら、今日走る事ができる力が自分に残っていた事に驚きました。と同時に自分の気持ちが1年半前と比べて随分前向きになっている事に気が付きました。

「人生」はどんなに頑張っても変わらない。でも「生き方」は変わる、しかもかなり高い確率でいい方向に。

【仕事始めの会】
2011年はうさぎ年で、私は年男です。そして今年9月に自身の診療所を開設する記念すべき年なのです。
現在、勤務している病院の仕事始めの日、1月4日、職員食堂に集合した50名ほどの職員の前で、突然の指名でお神酒の乾杯の音頭を取る事になった私は

「今年、私は年男です。昨年の12月にフルマラソンで3時間半を切る事が出来ました。約1年半前は近くのコンビニにも車で行くことが多かった男が、やる気になればここまで出来るようになりました。年男として私が今年のファーストチャレンジに選んだのは今月の15日に宮古島で行われるウルトラマラソンです。100キロ走る過酷なレースですが、必ず完走して今年の弾みとしたいと思います。それでは今年が皆さまにとって素晴らしい年となる事を祈って乾杯!」
という音頭を取り、かなり好感度を上げました。

一回上がった好感度を更に引き上げる事が出来るか、それともがっかりな結果になるかは私の2本の脚と心に
託されました。

自身の独立に対する願掛けの部分もありましたので、宮古島でのレースは「絶対負けられない戦い」
と位置付けられました。

【レース前日~相部屋の同室者】
今回の宮古島ウルトラの宿泊に関して、ツアー会社に申し込んだ部屋は勿論一人部屋です。しかし、私が選んだ
スタート地点まで徒歩で10分ほどで行く事が可能なホテル“マリア・ロッジ”はスタート・ゴール地点となっている
宮古島東急リゾートより宿泊費がかなり安い事もあり、人気だったようです。

ツアー会社から2人部屋か4~5人で宿泊する部屋のいずれかしか用意できないという電話を頂いた時は驚きました。5人はちょっと厳しいなと思い、2人部屋をお願いしますと答えました。同室になる方がどんな方か気にならないわけはありません。宮古島空港に「島人の宝」が流れる飛行機で降り立った後、バスでホテルに向かいました。

ホテルで部屋に到着すると、私と同年代の男性が既に到着していました。その方は東京都練馬区在住の私より
1歳年上の方で、ウルトラマラソンを何度か経験した事のある方でした。仮にAさんと呼びます。Aさんは見た目も穏やかで、かなりインテリジェンスの高そうな方、ウルトラを走るのは初めてではありませんが、タイムの向上を目指して走っているのではなく、100キロという距離を走る事を楽しむタイプとお見受けしました。ちなみにフルのベストもサブ4.5でした。

Aさんは私よりも年上なのに、私にとっても気を使って下さいました。言葉遣いも丁寧で、レースへの不安を随分、
和らげて下さいました。

これ以上の同室者を望んだら罰が当たる。むしろ一人よりもこの方と同室になって
アドバイスもしてもらえて最高に付いてるなと感じました。
この時に感じた安堵感は
相当なものでした。


私がウルトラは初めてである事や、フルでのベストタイムは3時間29分台である事を告げると、「それなら確実に完走できるでしょう。しかも確実に日のあるうちに到着しそうですね。私は明日は完走制限時間ギリギリでゴールすると思いますので、金沢さんはホテルに戻ったら、どうぞ入浴や夕食を済ませてゆっくしてて下さい。」と仰って下さいました。本当にそうなればいいがと半信半疑で聞いていました。

翌日の荷物を準備する時も、これはあった方がいい、これはいらないだろうとアドバイスしてくれ、非常に助かりました。きっと、ウルトラをやっていれば、いつかAさんとレースで又会えると思います。Aさんはウルトラマニアですし、制限時間の比較的長い大会を選んでいると話していたので、いつか必ず再会できると信じています。

【ツイッター】
宮古島ウルトラ遠足のレース中に二人のツイ友と出会う事が出来ました。

一人は@seikittwan(せいきちさん)、もう一人は@hashire_tamon(たもん君)です。せいきちさんは私と同じレースに出走しており、たもん君は16日のワイドーウルトラに出走しました。

15日の午前5時ちょっと前にせいきちさんが私を見付けてくれて、まずはがっちりと握手しました。レース中にも
何度かせいきちさんとすれ違いました。90キロを過ぎて走る事が出来なくなった私をせいきちさんが応援のために
せいきちさんの伴走をしていたたもん君が追い抜いて行きました。「カッコ悪いところをみられちゃったな」と思いました。

たもん君とはこの時しか会う事は出来なかったですが、せいきちさんとは翌日、宮古島空港でもお会いする事が出来ました。小一時間、ランについて、ウルトラについて、特にせいきちさんの夢であるサロマ湖ウルトラについて、
ツイッターについてなど色んな事を話しました。これまでも何人かのツイ友と会ってお話することがありましたが、座ってあれほどじっくりと話したのはせいきちさんが初めてでした。

せいきちさんが今年のサロマ湖ウルトラでサブ12を達成する事を願って止みません。

【まどろみ】
フルマラソンの前日もあんまりまともに眠れないかもしれませんが、ウルトラの前日の睡眠は“まどろみ”と呼ぶのが相応しいでしょう。

レース前夜に軽い興奮状態にならない人は少ないと思います。ましてや就寝は午後9時。いくらAさんがいい方だと言っても、その日初めて出合った方である事には違いありません。翌朝の起床時間は3時に決めました。

睡眠薬を服用して眠ろうとするのですが、そう簡単には眠れません。「こりゃ本当に一睡もせずに明日の朝を迎えるかもしれないな」と思いながらまどろんでいると、いつか浅い眠りに落ちていました。熟睡感なんてなかったです。

「こんな寝不足の状態で走るトレーニングもしとけばよかった。それにしても当直が多くて、普段は色々なベッドの上で、いつ鳴るか分からない電話に怯えながら寝ている私でもこんな状態だから、他の方々も同じようなものだろう。みんな大変だわ。やっぱりウルトラは過酷だ。」と改めて思いました。

【ウルトラは中年以降に目指すべき戦い】
宮古島ウルトラ遠足の参加者の内訳について触れます。

まず年齢層ですが、最少年齢は9歳、最高年齢は76歳。合計772人のうち、50歳~59歳が最多の208人、40歳~49歳が200人、30歳~39歳が147人、60歳~69歳が140人、20歳~29歳が42人、70歳~76歳が26人、10歳~19歳が7人、10歳未満が2人でした。19歳以下の参加者の完走率がどうだったか知りませんが、恐らくは
かなり挑戦的な試みだったのではと思っています。フルマラソンと比べて、ウルトラは50歳以降の参加者の割合
がかなり多くなると思われます。

次に男女比ですが、男性が488人、女性が284人と女性の参加者が多いです。しかも女性の参加者は概ね速い方が多かったです。フルマラソンではあり得ない女性のパワーを感じました。

都道府県別の人数では東京都が圧倒的に多くて139人、以下神奈川県92人、大阪府83人、千葉県60人、埼玉県58人、兵庫県35人、愛知県32人、北海道31人と続きます。宮古島への交通アクセスは那覇から飛行機で行く事になりますので、即ち那覇空港へ飛行機でアクセスしやすい空港が近いところにお住まいの方の参加が多い傾向に
あります。

ちなみに山口県からの参加者は5人です。山口からは恐らく、新幹線で博多駅まで行き、地下鉄空港線で福岡空港に行きます。そこからは飛行機で那覇、那覇から宮古島というルートになります。移動に要する時間は約6時間と決して短いとは言えません。

まとめますとウルトラマラソンは過酷なスポーツです。でもそれなりの脚力のあるランナーが、制限時間の緩い
大会を狙えば、かなり高齢になってもレース楽しむ事が出来ます。だって年を取れば、普段から起きる時間は早く
なっていると思いますし、フルとは違いレース展開はゆったりしたペースで進みますので、血気盛んな若者がガス欠になって失速していくのを尻目に、ゆうゆうとマイペースで壮年のランナーが抜いていく様は、ただただお見事としか言えません。

又、「BORN TO RUN」に女性ランナーはウルトラで、その強さをいかんなく発揮するという記述も参加してみてよく
分かりました。

今日はここまでにします。中々レースの内容までたどり着けなくてすいません。