正直言ってしまうと
性風俗店はやあさんとのトラブルは無い
客や隣軒とのトラブルはたまにあるものの
自分達で解決できていたし
やあさんに頼むことも必要もなかった

それに毎月来るであろう
あの付き合いも
たぶん田村会長が一括して
どこかと付き合っていたのかもしれないが
暮れにやって来るカレンダーと門松位で
1店舗目での
その手の付き合いは自然となかった

この2店舗目と事務所を持った事で
どこからか嗅ぎつけてきたのであろう
中学の二つ上の先輩から
連絡を受けた
とても評判の良くないやあさんで
成り上がりも出世もないであろう
器の小さい人で 
しゃべりたくも無い野郎で
連絡がきた時点で
良くないことだとは悟っていた

内容を聞くと
その先輩の兄貴分の佐藤と言う人間が
俺に会いたいと言う 

その佐藤と言う人物
20万近い人口のこの町をこれから背をうであろう次世代の有名なまだ30才前半のやくざで名前も聞いた事もあったし10年前に偶然草野球チームに参加した時に顔も合わせていた

それでその佐藤さんと所謂
企業舎弟になってくれと言ってきた

実際に
企業舎弟と言う言葉の意味も
あまりわからなかったが 
要するに 
こちらが金を貢ぐ代わりに
俺の困り事や店のトラブルなど解決する用心棒になると言う事だ
それに
困ったら時はすぐに金も調達してくれと
他の人間よりは
確実に資金が確保できるのと
俺の人間性につけ込んでの事だろうと思った

1週間後の待ち合わせで
場所は追って連絡すると

この手の話し合い、交渉、商談は
正直苦手でやっぱり逆らわない方がいいし
目をつけられたら潰れるまで
仕打ちを受ける可能性も高いからだ

自分はやられてもやり返さないやり方を
通してきた 
こちらが我慢し治めてしまえば
しこりも残こらないし
ある意味貸しになるから
再度の攻撃がほぼほぼない
もし2度目があった場合は
意見は言うし文句も言うし反撃もする
そのあとはまた貸しの状態でまた治め
それで終わらせる
だから
やくざの世話など必要は無かった
なので
ほんとめんどくせーなーと
ずっと思っていた

それから6日後の約束の前日

隣県で他の組員が射殺して
計4人が即死のニュース
でそのうちの1人が佐藤さんで
これは今も調べると記事がでてくる
その界隈では大ニュースだった

それで 企業舎弟にならずに済んだし
厄介事も無くなって
ほんと心底よかったと思っていた。