2024年3月20日に坂本長利さんが94歳でご逝去されました。 

 

素晴らしい方でした。 90歳の時の記念公演のパンフレットを読み返しました。

 

ご紹介させてください。

 

 

 

 

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ー令和元年坂本長利90歳記念公演 パンフレットよりー
   

精いっぱい生きる


坂本さんに初めてお会いしたのは、48年前、旗上げしたばかりの
「劇衆椿」の公演「冬眠まんざい』でした。

 

作:秋浜悟史  演出:竹内敏晴  美術:朝倉摂  照明:吉井澄雄

 

劇場は新宿のプーク人形劇場、これが私の初舞台でした。


慕開けは、東北の山奥の雪に埋もれた村。

 

赤いけだしで坂本さんにまたがり、首に縄をまき、足で坂本さんを蹴りながら「おらあ、死ぬだぁー、おど!」のセリフからでした。


まだこれからの自分の未来にも時代にも不安を感じて、フラフラしている私に「ミチ。毎回、今生きている生命を賭けてやれ!」と稽古場で云われたことは、今でも鮮明に心に刻まれています。


私の女優40年記念公演として、下北沢の劇場で『冬眠まんざい』を再演し(企画:大木雄高  演出:坂手洋二  美術:大野泰  照明:沖野隆一  演奏:太田惠資  協力:小川静夫、中西良太、小宮健五)。

 

それぞれのひとり芝居『土佐源氏』『ある市井の徒』『長谷川伸の世界』との3本立てで、坂本さんとの舞台が実現できたことは、本当に夢のようで励みとなりました。


毎回、『土佐源氏』を拝見するたびに、存在感のすごさと、ほとばしる命の鼓動を感じ、パワーをいただき、涙を流しております。

 

どうぞ、いつまでもお元気で、たくさんの人の心を揺り動かし続けて行ってくださいませ。


今、まるで後を追いかけるように、ひとり芝居『横浜ローザ』を演じ続け、もうすぐ25年を迎えます。

 

私も坂本さんから頂いた宮本常一さんの言葉を宝物にし、心の中でかみしめ、歩みを進めてゆきたいと思います。


どのようにささやかな人生でも、みずからの命を精いっぱい生きるものは、やはり素晴らしいことです。  

 

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心よりご冥福をお祈りいたします。

 

合掌。

 

          五大 路子