抗がん剤治療の為、
ポート増設手術を終えた妻から、
落ち込んだLINEが届いた。
「誰に言えば人生を返して貰えるの…」
今日の午前中は、
退院した時の妻が、
少しでも心が落ち着いてくれたらと、
リビング傍にある小さな庭に置く、
木を探しに行った。
常緑のヤマボウシという木。
春には可愛い花が咲いてくれるみたい。
本当だったら、
その小さな庭には、
息子が走り回るはずだった。
きっとスロープを喜んで、
ぐるぐると回って遊ぶんだろうなぁとか、
何度も想像していた。
本当なら今頃、
2階の片隅に置いてある、
ベビーカーや、チャイルドシートが大活躍で、
自分もパパとして子育てに奮闘して、
バタバタだったのかなぁ。
新しい仕事も、新しい家も、赤ちゃんも、
おじいちゃんおばあちゃんになって、
仲良く過ごす、幸せな人生も。
ほんと…一体誰に言えば、
返してもらえるんだろう…。
3年前に診察頂いていた泌尿器科の先生?
2年前の高度生殖医療センターの先生?
1年前の産婦人科の先生?
4ヶ月前の主治医?
それとも、
5年前に不妊治療を躊躇していた自分?
「自分が醜い…」
「何も出来ないのに、生きる意味があるの…」
とも、妻は言った。
一体妻のどこが醜いというんだ?
綺麗な心をしていて。
僕から見れば、妻は妻だ、ただ1人の。
妻がどうしようない時は夫が、
夫がどうしようもない時は妻が、
妻が先に病気になってしまっただけのことで、
夫が支えるのは当たり前のこと。
それが夫婦なんだから。
今は離れていて、
LINEくらいしかしてあげれないけれど、
色々と話して、
少しは落ち着いてくれたみたい。
みんな取られちゃったけど…、
病気のお陰で、妻を愛してくれている家族や、
助けてくれる味方が、
たくさんいることが分かったんだよ。
取られた分、
愛情が沢山やってきてくれているよ。
もう取り返せないかもしれないけど、
新しいものを手に入れることは出来る。
そう信じて、人生を歩むしかない。
僕が妻の幸せを、
これからたくさん作ってあげればいい。
100年分作ってあげればいいんだ。
そうしたら、病気もいつか、
消えてくれるかな…。
そう願って今日も眠ります。
息子は向こうで元気にしてるのかなぁ。
今日もママを守ってくれて、
ありがとう。
おやすみ。