<鎌倉新仏教について>

 鎌倉新仏教とは、平安時代末期から鎌倉時代にかけて誕生した新しい仏教の宗派や運動の総称です。貴族中心だった従来の仏教(旧仏教:南都六宗や天台宗・真言宗)に対し、武士や一般庶民へと広く救いを提示した点に最大の特徴がある。

 

  主要な6つの宗派(鎌倉新仏教の六宗)を中心に、その背景や特徴。

    <誕生の時代背景>

 1. 末法思想と混迷する社会 

 天災、飢饉、相次ぐ内乱(源平合戦など)により、「釈迦の教えが廃れる末法の世が来た」という不安が社会全体に広がった。

 2. 旧仏教の限界

 当時の旧仏教(比叡山や奈良の大寺院)は国家鎮護のための宗教であり、学問や厳しい修行、膨大な寄付を必要としたため、庶民や戦乱を生きる武士が救われる道はほとんどなかった。

 3. 比叡山(天台宗)での修学

 新仏教の開祖たちの多く(法然・親鸞・一遍・道元・日蓮など)は、比叡山延暦寺で学び、旧仏教の限界を感じて新たな救いを求めて独立した。

 

   <鎌倉新仏教の共通する特徴>

 鎌倉新仏教に共通するのは、難解な修行や学問を廃し、ひとつの教えに絞る「易行(いぎょう)」と「選択(せんちゃく)」の姿勢です。

 *簡単な実践:念仏を唱える、座禅を組む、題目(南無妙法蓮華経)を唱えるなど、誰にでもできるアプローチを重視した。

 *平等の思想:性別や階級に関係なく、すべての人間が救われる道を提示した。

 

   <主要な六宗派の概要>

系統別に大きく3つ(念仏系・禅宗系・題目系)に分かれる。

 ①    浄土系(念仏)

  浄土宗   法然  専修念仏:ただひたすら「南無阿弥陀仏」と唱えれば、誰でも極楽往生できるとした

  浄土真宗  親鸞  悪人正機説:阿弥陀仏の慈悲は、自力で救われない罪深い者(悪人)こそを救おうとする教え。

  時宗    一遍  踊念仏:全国を遊行し、札を配って踊りながら念仏を唱えるスタイルで庶民に普及。

 ②    禅宗系(座禅) 

  臨済宗   栄西  公案(問答):問答を通じて悟りを開く。幕府や武士階級(鎌倉幕府・室町幕府)に強く支持された。

  曹洞宗   道元  只管打座(しかんだざ):ひたすら座禅すること自体が悟りの姿であるとする。地方の武士や農民に

            普及。

 

 ③    法華系(題目)

  日蓮宗(法華宗) 日蓮 唱題:南無妙法蓮華経」の題目を唱えることで救われるとし、『立正安国論』で他宗や幕府を強く

              批判。

 

  <旧仏教への影響(旧仏教の革新運動)>

 新仏教の台頭に対し、奈良などの旧仏教側も黙っていたわけではない。

  *解脱上人(貞慶・法相宗)や明恵上人(高弁・華厳宗)らは。戒律を重んじ直す改革を行い、旧仏教の立て直し(鎌倉旧

 仏教の革新)を図った。

  *叡尊上人(真言宗)や忍性(極楽寺良寛・律宗)らは、貧困層の救済や医療活動など社会事業を積極的に展開した。

 

 鎌倉新仏教は、日本仏教が「国家や貴族のための学問・儀礼」から「個人の魂を救う実践的宗教」へと大きく転換した、日本思想史上の決定的な転換期と言える。