皇室典範の改正に異を唱えたい。真摯な議論もなく、国民の総意とは言えない改正だと断じる。時代錯誤も甚だしい。戦前の日本と戦後の日本では、根本的に「人権の価値観」が異なる。大日本帝国憲法下における日本は、天皇を元首とする立憲君主の国家主義体制だった。第二次世界大戦の敗戦により国家主義体制が崩壊し、1947年に日本国憲法が制定され、「国民主権国家」になった。天皇の位置付けは「象徴」である。
日本国憲法第一条:
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
今回の皇室典範改正の内容を確認しておく。
① 女性皇族の結婚後の皇族身分を保持する。(典範の12条を削除)
② 旧宮家(1947年・皇族離脱)出身の男系男子(15歳以上の独身男子)を養子縁組で皇族とする。典範9条(養子をすることができない)の例外措置として、養子を皇族と規定し、養子の子孫を皇位継承資格と明示した。
そもそも、皇族数確保を目的としてスタートした議論が、養子縁組を認め皇位継承まで踏み込んだこと自体に問題を感じる。旧宮家と言っても、600年前に遡り、36~38親等の血筋である。99.9%の赤の他人の一般人である。男系男子の皇位継承に固執する理由が理解できない。日本の歴史を天照大神の血を引く万世一系の天皇が統治する神の国とするのが皇国史観である。国民主権における象徴天皇とは相いれない歴史観だ。約2600年前に即位したとされる初代・神武天皇は神話上の存在だ。神話を史実と結びつける価値観を根拠に皇室制度を改正することは、日本国憲法の精神に相反すると言える。
各世論調査では、80%を越える国民が女性天皇を支持していることが明らかになっている。今上天皇ご自身は「国民の理解」が得られることを望んでおられる。今上天皇を「こんじょう」天皇と読むレベルの高市首相が主導する法改正だ。天皇への敬意が感じられない。麻生元首相の「みぞうゆう発言」が思い起こされる。未曾有(みぞう)が読めないとは信じられなかった。過去の歴史認識に固執する人たちの価値観は、私の理解を超える。
男女平等の価値観の社会において、時代にそぐわない皇室典範の改正そのものに異論はないが、内容が問題だ。皇位継承の議論は、女性・女系天皇をタブー視することなく、国民が理解できる真摯な議論をすべきだと思う。