教員に求められる資質は、「学力」・「コミュニケーション力」・「対応力」にあると言える。生徒への影響力のある「人間力」がポイントと考える。
経験的な視点から書くことにする。私が勤務した学校は、静岡県立高校の東部地区に限定される。初任校が下田南高校・定時制(5年)、2校目が吉原高校・女子校(7年)、3校目が三島南普通科・商業科併設高校(10年)、4校目が御殿場高校・実業科(7年)、5校目が御殿場南高校(10年)、再任用で沼津北高校(3年)の6校で勤務した。期間は、1970年から2012年の42年になる。
「学力」を簡単に、<学び習得した知識・技能と学び続ける知識と技能>と定義する。高校の教員は、小・中学の教員よりも専門的な知識が求められる。高校生の学力は、学校及び校種で明らかにレベルが異なる。東部地区のトップレベルの高校は、沼津東・富士・韮山の3校である。これらの学校の生徒は、一流大学に入ることが目的であり、教員には受験のための授業を求める。まさに受験教育である。学習能力が高い生徒が多くいるために、学力の高い教員が求められる。しかし、生徒への指導力や高いコミュニケーション力が求められることはない。
私の記憶に残るエピソードがある。私が三島南高校に勤務していた時の話しだが。当時の三島南は、男子だけの普通科の生徒の指導が大変だった。S教員は、沼津東から転任してきた。彼は、「マニュアルがないと生徒指導ができない」と職員会議で平然と言っていた。呆れて物が言えない。教員としての適性に疑問を感じた。T教員は、富士から教頭として転任してきた。彼は、「生徒課長をしていたので、生徒指導にはいささか自信がる」と公言した。私は、内心何を馬鹿なことを言っているのかと思ったほどだ。案の定、授業が成り立っていなかった。担任として生徒に注意したが、その授業風景を書くことはできない。彼には生徒をコントロールする力がなかった。所詮、教員は生徒になめられたら駄目だ。教員の生徒指導には本気の覚悟がいる。私は定時制で、生徒指導を経験して学んだ。
30代中頃から40代にかけて、様々な教員と出会った。個性の強い教員が多くいた。言葉を変えると、癖があり変わっている教員を多く見て来た。管理職志向の教員は、40代前半の立ち位置が明確になる。学年主任から各課長を経験し、校長の推薦を受け教頭になった先輩教員が数人いた。その中でも印象に残っている教員が二人いる。吉原高校へ同期赴任した先輩教員だ。年齢的には、10歳くらい上になる。最初の1年間はよく麻雀をしたので、お互いの人間性はよくわかる。教員社会も年功序列ではあるが、上下関係はそれほどでもなかった。ある時に、Kさんが私に言った言葉は忘れられない。「相川さん、麻雀をしていたら偉くなれないよ」と。彼は、その後学年主任・教務課長を経験し、教頭・校長の管理職になった。もう一人のTさんも、学年主任・生徒課長から教頭・校長になった。私の知る限り、変わり者だがTさんほどの努力家はいない。二人とも地方の国公立大学卒である。
教員の大事な資質は、「生徒のための視点と関わり方」にあると私は思っている。