言葉は、諸刃の剣と言える。一言が人の心を傷つけることもあれば、励ますこともある。言葉は心の表現であり、人の内面を映し出す。言葉は、使う人の知性や品格が表れる。
先の参議院選挙での政治家の発信する言葉にもよく表れている。参政党の候補者の発言は物議を醸した。神谷代表のキャッチコピー「日本人ファースト」は、賛否両論を巻き起こした。トランプ大統領の「アメリカファースト」と変わらい。「自分ファースト」につながり、人間のエゴイズムを象徴していると捉えるのが私の見方である。更に、彼の発言の一貫性の無さを感じた一人である。さや候補の「核は安上がり」発言は、被爆国日本への配慮に欠けている。参政党の憲法草案は、戦前への回帰と言える。天皇元首の国家観は、国民主権の民主主義を否定することになる。自民党の鶴保議員の「運のいいことに能登で地震があった」発言は、被災者の心をどんなに傷つけたことか。訂正し謝罪すれば済むことではない。
言葉の発信には、受信者への想像性が欠かせない。
イチロー氏の米野球殿堂入りの英語のスピーチを耳にした。とても感動的なスピーチである。ネットから英語のスピーチ全文を読んだ。次の英文は、野球についてのスピーチである。
Baseball is so much more than just hitting, throwing and running. Baseball taught me to make valuable decisions about what is important. It helped shape my view of life and the world.
この日本語訳は、各社の報道によって異なる。根本的な解釈に違いはないが、日本語表現には違いがある。
「野球は、単に打ったり、投げたり、走ったりするだけのものではない。」この部分に関しての和訳には、ほとんど違いはない。次の二文は、まさに英語表現である。直訳と和訳を比較すると、英語と日本語の違いが分かる。
A)「野球は、私に大切なことを教えてくれました。野球は、私の人生や世界の見方を形成することに役立ちました」(直訳)
B)「私は、野球を通じて、大切なことについて、大事な決定をすることを学びました。野球によって、人生観や世界観を形成
することができたのです」(和訳)
言語は、文化の違いである。英語と日本語には、根本的な仕組みに違いがある。英語は、物や事柄を主語に、目的語である人に働きかける(動詞)ことになる。語順は、SVOになる。英文は、野球が主語になっていることがポイントと言える。通常の日本文は、人を主語にする構造(SOV)になる。ここに本質的な違いがある。要するに、英語は動作主を主語にするという言語の仕組みである。
イチロー氏が、英語の仕組みでスピーチしたことが、アメリカ人に伝わったと言える。言葉は、コミュニケーションの手段である。言葉の表現が大切な所以である。