久しぶりに、NHK囲碁トーナメントの一局をじっくりと見た。若手のプロ棋士の対決。藤沢里菜女流名人(22)VS大西竜平七段(20)で、解説が武宮正樹九段(69)。里菜女流名人は、故藤沢秀行九段の孫にあたり、10年前にプロ入りした。彼女が中学生の頃から注目していた。解説の武宮九段は、私が囲碁を覚えた頃の人気のプロ棋士だった。40年前になるが、当時は囲碁の全盛期だったかもしれない。

 武宮九段が、囲碁は「とても面白いゲームだ」と言っていたが、その通りだと思う。しかし、囲碁を知らない人には、「まったく理解できないゲーム」でもある。ゲームのやり方さえ覚えれば、誰でも楽しむことはできる。私のように、進歩のない人間もいるのだが。実力の差は、はっきりと出てくる。同じようなレベルの人との対局こそ、勝負の面白さがあるとは思っている。10年前には、インターネットでよく対決した。外国の人たちとも対局し、チャット(簡単な英語)で話したことをよく記憶している。まさにグローバルな世界である。

 5年程前になるが、AIがトップレベルのプロ棋士を破ったことを知った。その時のショックはよく覚えている。チェスと将棋に比べて、囲碁はそう簡単には追いつかれないと思っていた。AIの「ディープラーニング」の進歩で、あっという間に追い抜かれてしまった。それ以来、囲碁からは遠ざかっていた。自分自身が囲碁を打たなくなると、関心も薄れてくるものだ。現在は、囲碁も将棋も若手のプロ棋士の時代になっている。AIの影響を最も受け、学習し研究している世代が中心になっている。将棋界の藤井聡太二冠(18)、囲碁界の芝野虎丸三冠(22)が代表的な棋士と言えるだろう。芝野虎丸名人は、井山裕太三冠(31)にタイトルを奪われた。その情報を今日知ったのだが。

 数日前から、「囲碁クエスト」を再開するようになった。スマホでは、「9路盤」で6千局以上打ったのだが、点数は上がらず、下がっていた。数年ぶりに、パソコンの「13路盤」で打つようになった。13路のほうが、19路を縮小した感覚で打てるが、盤上の格闘技のようになってしまう。9路は、更にその傾向が強くなる。私の場合は、9路も13路も同じような点数であることには変わらない。点数は、実力そのものを表している。私のレベルの人たちの割合が最も多いことは確かである。所謂、初段前後の人たちである。囲碁クエストの持ち時間は、13路で5分であるので、考えている時間はない。感覚で打つ習慣が身についてしまい、考えて打つことがなくなってしまった。「下手な考え休むに似たり」が昔の私ではあるのだが。いくら考えてもわかるわけではないのに。AIの出現によって、歴史的に積み重ねられ、継承されてきた「定石」や「布石」の常識は覆されてしまった。「悪手」とされてきたことが、AIによって「好手」に変化してしまっている。プロの対局の推移をAIが分析し、優劣を評価する時代になっている。AIには、感情がないし、疲労することもない。人間は、感情もあれば、疲労もする。AIと競争する意味はないということだ。囲碁や将棋に限らず、様々な分野でAIの影響を受ける時代になったことは間違いないことだ。