昨日、吟行で「三島楽寿園」へと出かけた。「吟行」は、作句・作歌などのため、同好者が野外や名所旧跡に出かけて行くこと。(広辞苑)俳句を初めて1年有余が経過した。私にとって、今回の吟行は初めてだった。「裾野市立図書館俳句会」のメンバー9人(1人欠席)で行き、現地で2時間ほど過ごした。

 園内では、約1万年前の富士山噴火の際に流れ出た溶岩(三島溶岩流)の上に実生した樹木や、野鳥を観察することができる。元は、小松宮彰仁親王の別邸であった。

 私が、この楽寿園に最初に来たのは、30数年前になる。その時には、「小浜池」は湧水に溢れていた。その後しばらくたってから来てみると、小浜池の湧水がなくなり、溶岩がむき出しになっていた。今年は、雨が多かったためなのか、水深2メートルを超えたと知り、先日来てみた。満水の池は久しぶりだった。この池を水源とする「源兵衛川」の水が溢れていた。川の中の木道を歩くことができなかった。

 吟行は、観察力が大切でメモを取るようにと、講師のY先生に言われた。見て感じたことを俳句にするとのことだ。やはり、物事の視点が大切となる。

 吟行を終え図書館に戻り、午後から定例の句会が開かれた。今月の兼題は「葡萄」である。5句以内の投句との指示がされた。その中に、吟行の句を含めることになる。

 Y先生の特選5句を紹介する。

   <葡萄食ふ一粒ごとの値打ちかな>(K・H)

   <早起きのほうびのやうな初紅葉>(M・M)

   <走り根の溶岩(ラバ)をつかみて初紅葉>(M・S)(最多特選句)

   <湧水や人集ひ来て小鳥来る>(S・K)

   <弟の声は父似や葡萄もぐ>(K・K)

   葡萄の名句は、<亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄>(川端茅舎)と教わった。 

 私の吟行の句は、<初紅葉湧水満ちる小浜池>と見たままの句である。

    投稿句は、<長き夜や友と語らふ伊豆の宿>

         <歩けども歩けども尾瀬草紅葉>

         <打ち寄せる波静かなり星月夜>

 俳句を作ることは難しいが、句会での選句も難しいと感じている。私の未熟さと感覚の違いは避けられない。歳時記の例句の勉強をするしかないだろうが、正直ながら、例句の良さは、私にはわかりにくい。しかし、次のような例句は好んでいる。

    <白菊の雲の如くにゆたかなり>(橋本鶏二)

    <一雨に濡れたる草の紅葉かな>(日野草城)

    <星一つ命燃えつつ流れけり>(高浜虚子)

    <稲かれば小草に秋の日の当たる(与謝蕪村)