昨日、安倍首相が辞任会見した。体調不良(潰瘍性大腸炎)により、政権を続けることができないとのことだ。第一次安倍政権(2006年9月~2007年8月)に引き続き、突然の辞任表明での政権幕引きとなった。第一次安倍政権では、「美しい国、日本」と「戦後レジームからの脱却」をスローガンに掲げていた。「政治とカネ」をめぐる不祥事や辞任が相次ぎ、「消えた年金問題」が社会問題になった記憶が残っている。
第二次安倍政権は、憲政史上最長の7年8か月の長期政権となった。国政選挙において、6戦全勝という選挙に強い安定政権として、「安倍一強」政権となった。菅官房長官、麻生副総理兼財務大臣が内閣を支え、今井尚哉総理秘書官等の側近官僚が官邸を支えたと言える。2014年5月の内閣人事局の発足に伴い、上級官僚の「人事権」が、内閣官房に集約され、官邸に権力が集中した。これ以降、エリート官僚の官邸への忖度が強くなったことは確かだ。
経済政策「アベノミクス」で、日銀の異次元の金融緩和政策が続けられた。しかし、デフレ脱却にはならないまま、現在に至った。今年の新型コロナ感染拡大により、経済は急激に悪化した。そのため、コロナ対策と経済対策という最も難しい局面になっている。
アベノミクスにより、円安・株高により、輸出産業を主とする大企業の業績は良くなったが、安倍首相の期待する「トリクルダウン」することはなく、99%を占める中小企業、70%の中小企業従業員には、何の恩恵もなく、更に「経済格差」が拡大していった。安倍首相はアベノミクスにより、380万人増えた(2013~18)と雇用増大を誇るが、その内の55%は非正規雇用者である。現在進行中のコロナ禍で、職を失うのは、非正規雇用者であり、中小企業で働く人たちである。
重要法案としては、2012年12月に、「特定機密保護法」が成立し、2014年7月に、集団的自衛権の限定容認を閣議決定し、2015年9月に、集団的自衛権の一部行使容認を含む「安全保障関連法案」を強行可決した。2017年6月に、テロ等準備罪が成立し、7月より施行された。2018年7月には、「IR実施法案」を可決させた。すべて「数の力」によるもので、民主主義とは程遠い。
私は、「集団的自衛権」について関心を持ち、憲法との整合性について考える機会となった。集団的自衛権の一部容認は、「個別的自衛権」の範囲を超えた拡大解釈だと思う。「専守防衛」が日本の基本的な方針である。安倍首相(自民党)の目指す憲法改正4項目には反対のスタンスである。1)自衛隊の明記2)緊急事態条項3)合区の解消4)教育無償化の明記の4項目であるが、最大の問題は、緊急事態条項の明記である。憲法は権力を規制するものであり、緊急政令を憲法化する必要性はない。コロナ禍で、緊急事態宣言が発令されたが、国と自治体の連携にこそ問題があることが分かっている。責任の所在が明確ではないことこそ問題である。憲法の問題とは次元が異なると感じている。
2017年2月に、国有地売却を巡る「森友学園問題」が発覚した。昭恵夫人の関与が焦点になった。同年5月に、獣医学部新設を巡る「加計学園問題」で、総理のご意向文書が発覚した。2018年3月には、森友問題で財務省の「公文書改ざん」が発覚した。2019年5月に、「桜を見る会問題」が表面化した。これらの問題は、不明朗なまま現在に至っている。2020年5月には、国家公務員の定年延長を可能にする国家公務員改正法案とともに検察庁法改正案が提出されたが、通常国会での成立は見送られた。この問題点は、検察への人事介入である。国家公務員の定年延長が問題なわけではない。
首相の連続在任日数が最長になった安倍政権だが、国民のための政治が行われたかどうかは、はなはだ疑問である。側近の稲田朋美幹事長代理は「国民のための政治なんて間違っていると思います」と公言した。この発言にこそ、自民党政治の本質がある。国民主義の政治ではなく、国家主義の政治を目指しているのが、自民党の政治だと言えるだろう。