あるテレビで、八千草薫の言葉が紹介されていた。それは「あなただけの、咲き方で」の本の中で、書かれている言葉だった。早速アマゾンで取り寄せて、一読した。
私は、芸能人にはあまり興味がない人間だ。私には虚像の世界に思えるからだ。従って、その世界にいる人たちに憧れる気持ちは昔からなかった。あくまでも役の上での人として見てきた。その中で、いい俳優や女優だとみなしてきた。その中の一人が八千草薫だった。今の女優では、吉永小百合が素敵だと思っている。
私が八千草薫を知ったのは、30歳頃で、彼女が40代中頃だった。何のドラマだったかの記憶が無いのだが、「岸辺のアルバム」かもしれない。このドラマは、台風のために多摩川が決壊して、一軒の家が流された記憶しか残っていないのだが。私が住んでいた川崎市の宿河原からはすぐ近くだった。対岸の和泉多摩川の出来事だった。
ともかく、八千草薫は素敵な女優というよりも「素敵な女性」だと感じたことを記憶している。その頃の私は、女子高校で教えていた。映画の話題になり、ある生徒が「先生、好きな女優は誰ですか?」と聞かれ、「八千草薫。彼女の女性らしさが魅力だ」と答えたと記憶している。このことは、あくまでも「イメージ」の世界の話しである。
「あなただけの、咲き方で」を一読しての感想は、私の持つイメージが虚像ではなく、実像だったということだ。会ったこともない人に、このような思いを抱かせてくれる女性であったということは嬉しい。「華やかな世界が苦手で、女優に向いているのかと常に自問自答しながら、続けてきたというのが正直なところです。ただ、他の人と比べてあれこれ悩むよりも、自分らしい生き方ができたらいいのではないか。ときを経るごとに、そんな思いにようやくなれたような気がしております。」と書いている。正直な気持だと受け止めている。
私の信条は「自分らしく、正直に」である。その気持ちを持ち続けて生きてきた人生との自負がある。決して器用な生き方ではないし、世渡りも下手である。それが私の個性であり、生き方なのだ。八千草薫さんも、女優という華やかな世界にもかかわらず、自分らしく努力したことがよく理解できる。彼女は、素晴らしい女性であり、生き方だったと思う。
この本の中で、印象に残った見出しの言葉をいくつか列挙しておく。
「品位とは、相手を思いやる気持ちのこと」
「身だしなみの本文は『飾り立てる』ことではない」
「言葉に心を込める」
「感動は自ら見つけにいくもの」
「正解がないものこそ追求できる」
「演じることは、人の人生と真摯に向き合うこと」
「たとえ人が見てなくとも最善を尽くす」
「丁寧に向き合う時間が豊かな結果につながる」
「誰もが必ず持つ“宝物”に目を向ける」
「適度な緊張感はプラスに働く」
「幼少時の経験が、夢の世界の始まり」
「美しい音色が女優活動の礎に」
欠点は魅力の一つになる」
「辛さを体験してこそ、得られることがある」
「大切な人こそ、ありのままの姿を見せる」
「夫婦の絆は弱さを見せ合うことで深まる」
「美しさとは若さにこだわらないこと
「自分らしくいられる洋服を選ぶ」
名言とも言える含蓄のある言葉の中に、八千草薫の人生がある。私の印象と好みで選んだ言葉であることを承知して頂きたい。一読に値する書だと信じる。
