この学年を教えていた2003年の2月に副鼻空炎を発症した。長泉町に開院直後の

「静岡がんセンター」の脳神経外科に行ってわかったことだが、その後地元の耳鼻科に

通院し、長泉町の耳鼻科に変えて通院が続くことになった。2007年の10月に順天堂

大学附属病院で手術をし、1週間入院した。その翌年の2008年3月が定年であった。

病気と気力で戦った期間に、教師としての“醍醐味”を味わった。教職を“天職”と感じ

たのである。その意味で、この学年の2年間と次の2004年に入学し、2007年に

卒業した生徒には「感謝」の気持ちである。2004年に入学した生徒を1年、2年、

3年と授業を持った生徒が「ゆとり教育」を受けてきた学年である。この2004年の

7月に毎日新聞に投稿し、掲載された文章を参考に載せる。

 「今年度初めて、新教育課程で高校に入学してきた生徒を教えている。現在、私が勤務

している高校は、進学校と呼ばれている2番手の学校で、『学校5日制』・『ゆとり教育』

の中で、教育を受けてきた生徒たちである。よく言われていることだが、『学力の低下』

は否めないとの実感を受けた。基礎・基本の理解及びその習得が不十分である。

私が教えている教科は英語だが、一例をあげると、基本動詞の活用が不正確で、そのこと

自体何も感じていないようだ。オーラルコミュニケーションを重視する授業が中学でなさ

れているようだが、そのことを否定するつもりはないが、中途半端になっているように感

じる。単語にせよ、短文にせよ書かせてみると、基礎力が定着していないことが歴然とし

ている。だが、私の教えている生徒たちは、姿勢は受身だが、素直でまじめな性格のよい

生徒たちである。生徒との触れ合いがとても楽しい。生徒の潜在能力は低下していない。

教育は『人を育てる』のが目的である。一面的な視点ではなく、全体的な視点で、子ども

たちの成長を育むのが教育の使命であると私は思う。」

 この生徒たちを3年間教えたのだ。3年間の教材選定から、補習計画、シラバスの指導等

英語科の責任担当が私である。同学年で英語を担当したのが、OさんとTさんである。

3人とも50代のベテランであった。私にとって持ち上がって教えた最後の学年の生徒だけに

 

思い出が深いのである。1年の夏休みには、シラバスの「中核」を育てる意味で、10段階の成

 

績で8以上の生徒を指定し募集して夏季補習を行ったのである。一部の保護者から上位の生

 

徒だけを補習したとの苦情があったことを聞いたが、それは誤解である。その生徒以外の補

 

習も行ったのである。担当者が私ではなかったということである。

 この学年が2年の時に、私は、文系シラバス1と理系シラバス3の授業を担当し、3年次

も引き続き同じシラバスを担当した。この文系シラバス1は、2002年に持ったシラバス1

とは雰囲気が全く違うものだった。中心が女子生徒だったのが特徴であった。挨拶の号令

 

をかけたり、教科係を自主的に勤めた3人の生徒の印象が強く残っているのだ。A子と2人

 

のY子である。このシラバス1の生徒たちが卒業次にくれた色紙は、パソコンに打ち込み

 

印刷して保存してある。この3人の生徒は、1年後の私の定年の時に来てくれた。またシラ

 

バス3の男子も2人来てくれた。私のアルバムにこの生徒たちの写真が残っている。

 

有り難く思っている。

 

付記しておくと、この学年の生徒が私のことを「相ちゃん」と呼んでいたのは、私の教員生活

 

で、最初で最後の経験でもある。生徒が親しみを込めて呼んでいたので、暗黙の了解をして

 

いた。またこの時期も、私の体調も決して良くはなかったのも事実である。しかし、、私の教師

 

生活で、体調が充分ではないけれども、気持ちに「ゆとり」があり、最も楽しかった3年間であ

 

ることも事実である。2006年度の反省記録を記しておく。

<文系シラバス1>

「生徒は、意欲的に授業に取り組み、授業態度・反応もよく、英語Ⅱと2名を除いて継続

した結果、やや緊張感に欠けるが、楽しくわかりやすい授業がほぼ達成できたと評価して

いる。この点で、生徒との温度差は少ないとアンケートの結果から感じている。満足でき

ない点は、このレベルの生徒でも家庭での学習が不足していることである。前期は教科書

を中心に速く正確に読むことを目標に、文章の概要を段落ごとに把握することに力点を置

きフレーズリーディングの授業を進めた。そのための補助としてプリントを作成し予習に

活用させた。授業では、語彙・構文・語法・文法などを必要に応じて説明し、仕上げに音

読をした。楽しく授業ができたとの印象が強い。後期はセンター対策の授業が中心になっ

たと言える。そのため、演習的な授業が中心になった。テーマによっては余談として個人

的な持論も伝えた。生徒は時には真剣に耳を傾けてくれ、授業が楽しかったとの感想が多

かった。」

<理系シラバス3>

「生徒は、家庭学習が不十分で、意欲的に授業に取り組んだとは言えないが、比較的真面目

に授業を受けてくれたと感じている。授業態度・反応はアンケートの結果とほぼ一致してい

て、プラスの評価約65%は妥当と評価している。しかし、80%弱の生徒が授業を受ける

のが楽しく、85%を超える生徒が質問できることや質問にていねいに答えてくれるとの

評価をしてくれている。前期は教科書の精読に力点を置き、基礎・基本を大事にわかりやす

い授業を心がけた。生徒は余談として話したことを好意的に受け止めて、授業を受けるのが

楽しいとの評価は嬉しいが、学力向上に結びついていないのが残念である。後期はセンター

対策の授業が中心になったのは文系シラバス1と同じである。」