憲法には、戦後から長い間、「改憲」と「護憲」の考え方に分かれている。
施行時とは世界の情勢が変化していることは事実だ。北朝鮮の問題も緊張感を
増している。国の「安全保障」の問題が重要との認識は共有できるであろう。
それにしても安倍総理・総裁の独断専行の議論の呼びかけには違和感を覚えて
ならない。憲法は「国民の権利」であり、国民が決定するものだ。その国民の
代弁者である国会議員の間で、党利党略ではなく、国民の視点で議論をし、
主役の国民に提案すべき問題だ。我々国民も日本の将来の針路をしっかり考え
ていくべき権利と義務がある。
「法の法」たる憲法は、法の執行者である権力を規制する「最高の法であり、
主権は国民にある「主権在民」の民主主義の根幹なのだ。1内閣の総理がトッ
プダウンで行なえるものではない。党利党略を超えて、国民の負託に答えるの
が国会議員である。「三権分立」の原則からは、国会が重視されるのは当然な
ことだ。安倍総理は国会での答弁で、自民党総裁としての考え方は「読売新聞
を熟読すればわかる」発言は一体なんなのか。国会を軽視し、国民を馬鹿にし
ているのだ。その自覚があまりにも足りない。自身の長年の悲願を実施できる
チャンスと捉えているのだろうが。自民党内でも議論されていないことが、
一つのメディアである読売新聞のインタビューに答えた形だ。それを国会で質
問されると、国会の場では、総理としての発言はできないとした。明らかに、
総理・総裁を使い分けている。与党の総裁が総理になるのが、「議院内閣制」
だ。総理・総裁が一体なのは誰にでもわかることだ。馬鹿な詭弁を使うべきで
はない。安倍総理のやっていることは、大統領制のアメリカのトランプと変わ
らないと言ったら言い過ぎだろか。それ程安倍総理に権力が集中している。
消極的とも言える国民の内閣支持率に支えられている。自民党の派閥が崩壊し、
自由に発言できる政党とは言えなくなっている。まず自民党内での議論を深め
てもらいたいが、人選を見ると総理の意向に従って意見を集約することになり
そうだ。議論すべきことは、しっかりと議論をして、急がずに結論を出すよう
にすべきだ。共産党は別だが、野党(民進党)にしても反対だけしていればいい
わけではない。国民が理解できるような案を考えて出すべきだ。国会の総意と
して国民に問うべき案にすべきではないか。改正には、850億円ものコストが
かかることをはっきりと伝えるべきだ。我々国民もしっかり論議をすべきだと思う。
自民党案は、総理の意向に沿って、現行条文の維持を検討し、「9条の2」
新設案で、自衛隊の存在を明記する案に落ち着くのではないか。結論ありきが
気に入らないのが私である。議論を詰めた結果の合意であれば、反対するつも
りはない。「専守防衛」の日本安全保障の上からも、「自衛隊の存在」はきち
んと認める状況に変化してきた。昔とは国民の意識が変わっている。変わらな
いのは憲法学者なのだ。9条2項との整合性は確かに難しいが、現行憲法のま
までの原理的な解釈をすれば、憲法学者は間違ってはいないだろう。現実は
国民の8割が、自衛隊の存在を認めている。そのことを考慮すれば、憲法に明記
することは自然ではないのか。また「高等教育の無償化」の考え方には異論がな
いが、財政的裏付けをきちんと国民に説明し、国民的論議を深めるべきではない
のか。机上の空論にしてはいけはいけない。それに伴う増税をはっきりと言うべき
だ。総論賛成、各論反対にしてはいけない。また世論を2分するような結論にして
ほしくない。繰り返すが、憲法を決めるのは私たち「国民」なのだ。