私の長年の親友も退職してから2年になる。私とはタイプが違い行動派だ。
彼は私によく「お前は考えすぎだよ」と言う。実際にその通りなのだが。長く
ブログの更新がないために、私の体調を心配してくれていた。最近の電話で
私に犬を飼うように勧める。「かわいいし、とても癒されるよ」と。犬を飼い始
めて2年になると。犬種はチワワで、名前はアルパ、スペイン語で暁・希望と
の意味だと。ラインで写真も見せてくれた。彼がチワワを散歩に連れている姿
はとても想像ができない。私も犬が好きでまた飼いたいとも思ってはいるが。
私が一番好きな犬種はゴールデンレトリバーなのだが、大型犬はとても飼う
ことはできないので諦めていた。私が以前飼っていたシェルティーも好きな犬
だ。その犬のことは鮮明に記憶している。昭和59年の4月に生まれ、5月の
中頃家に来た。名前はバロン(男爵)で、私がつけた名前ではない。血統書か
らの名前ままだ。同僚の教員が紹介してくれたブリーダーから直接分けてもら
った。私の掌に載せて連れてきたとてもかわいい子犬だった。犬を飼ったのは、
亡き父親の要望だった。狭い庭の犬小屋がバロンの居場所だったが、いつのま
にか家の中にいる方が多くなっていった。バロンは、容姿が良く、賢く、実に
繊細で、感情表現が豊かだった。性格は臆病で寂しがりだが、頑固だった。私
たちが買い物に出かる時に、残されるのをいやがり、出かける前から落ち着か
ない様子だった。車に乗るのはあまり好きではなく、車の中からいつも頭を出
していた。バロンは家族の一員だと思っていた。私の家では、私に対しては絶
対服従で、私以外には結構わがままを通していた。子どもたちの言うことは聞
かないで、自分の方が立場が上だと思っていたようだ。バロンは私の妻が一番
好きだった。妻が言うには、バロンは鳥のからあげが大好きで、臭いがすると
そばに寄って来て離れなかったそうだ。バロンに対して不思議に感じていたこ
とが一つある。車のエンジン音に敏感に反応していた。当時は東側が菜園にな
っていて、その奥に隣の家があり、その車のエンジン音に異常な反応を示した。
隣のおじさんが車に乗る前から、大騒ぎしていたが、隣のおじさんを嫌ってい
たわけではない。隣で植木いじりをしていても吠えることはなかったが、車で
出かけると狂ったように吠えて追い回すのだった。エンジン音には、もう一つ
面白いエピソードがある。その頃、バロンの寝る場所は玄関だった。車の点検
のために、私が代車に乗って深夜に帰って来た時に、玄関を開ける前から吠
えていた。私が玄関を開けた瞬間にまずいと気が付き、「馬鹿野郎」と怒られ
た時の表情が忘れられない。私が自分の車で深夜に帰って来た時は、ひょこっ
と顔をあげてちらっと私を見るくらいであった。バロンが嫌いなのは、お風呂
に入れられることだった。だいたいが水に濡れることを嫌っていた。妻がお風
呂に入れようとしてバロンに近づくと、頑として動こうとしなかったそうだ。
無理やりお風呂に入れて洗ったことが今でも話題になるくらいだ。このバロン
は平成5年の秋に亡くなった。9年半の命だった。妻は亡くなった時が辛いの
で、再び犬を飼う気持ちにはなれないと言っている。