「囲碁の世界」が大転換期を迎えている。人工知能・「アルファ碁」の開発

によるAI囲碁ソフトは、昨年の10月に、ヨーロッパチャンピョンのプロ二

段に、5戦全勝したことが、英国科学誌ネイチャーで発表された。プロ棋士だ

けではなく、人工知能研究者にも驚きと注目を集めた画期的な出来事だった。

その勝利から5ヶ月経過しているので、進化を遂げているとは思っていた。

世界最強棋士の一人であるイ・セドル九段(33)との対局が3月に行なわれ

るのを楽しみにしていたが、イ・セドル九段が負けるとは思ってもいなかった。

日本・中国・韓国のトッププロ棋士も同じように予測していたようだ。結果は、

アルファ碁が3連勝し、4戦目でイ・セドル九段が一矢報いたが、5戦目もア

ルファ碁が勝利した。4勝1敗でアルファ碁の圧勝となった。人工知能の人間

への勝利と報道された。とてもショッキングなニュースである。囲碁の打つ手

は無限とも言える。囲碁は宇宙に譬えられる。計算では不可能と言われていた。

人間の持つ「感覚」の世界を学ぶことはできないと誰もが思っていた。開発し

たグーグル傘下のデイープマインド社の研究グループを除いてだが。まさか

こんなに早く人工知能が勝つ日が来るとは思っていなかった。あと10年は

かかるだろうと言うのが、一流プロ棋士の見方であった。何が勝因となったの

かの分析では、デイープ・ラーニング(深層学習)により、人工知能に

学習能力」を与え、鍛えさせたことにあるようだ。コンピュータが学習する

画期的な時代を迎えている事実を真摯に受け止めなければならないということ

だ。人間は、記憶や計算ではコンピュータに勝てないことは承知していたが、

人間の「感覚の世界」まで学習できるようになっている。プロの囲碁は

直感」によって形勢を判断をし、それを裏付ける「ヨミ」が求められていた。

コンピュータは、この「ヨミ」は計算できるということだ。人間が直感的に良

いと感じる一手を予測できることになる。想像もつかない。アルファ碁は、

世界ランキング4位となった。5万3000局の対局結果をもとに、世界

1719人の棋士のレーティングの結果である。日本のトップ棋士の井山裕太

九段(26)が3位である。イ・セドル九段が5位。ランク1位は中国の18

歳のプロ棋士柯潔九段。彼は「アルファ碁、お前はイ・セドルに勝っても俺に

は勝てない」と挑発的に宣言している。ますます人間VS人工知能の図式にな

る。人間のプライドにおいて人工知能には負けないとの意識が高まって来たと

言える。囲碁は様々な局面で「最善手」というものがない。正解がないのであ

る。勝負に勝った方の打った手が勝ったにすぎない。アルファ碁は人間の打っ

た手を計算して確率の高い手を選ぶ学習がなされいるが、人間の打つ手に正解

がないのだから、アルファ碁の打つ手にも正解がない。コンピュータには感情

がなく、人間には「感情」があることが一番の違いとなる。



「アルファ碁は、ニューラルネットワーク(神経回路網)という技術で、人

間の直感力を身につけた。「人間の脳」をまねる技術のようだ。

「直感力を身につけたという意味では人間と同じだ。むしろコンピュータが人

間に対して圧倒的に有利なのは、他のことを考えないことだろう。脳の神経回

路網はコンピュータよりははるかに複雑だが、イ九段といえども脳の大部分は

その日の食事のことから家族のことまで ― 現実世界を生きるという囲碁より

もはるかに複雑なゲームのために占められている。

 仕事特化で考えるならAIは人間よりも優秀になりえる。しかもイ九段がい

くら優秀でも一人きりだが、アルファ碁はいくらでもコピーできる。自動運転

にしろ、多くの職種がAIに取って代わられると予想されるのもそのためだ」

(3月17日毎日新聞 坂村健(東大教授)の目から)



 私はAIの進化によって、「人間の在り方」や、「価値観」が変わると考えてい

る。学校教育も、根本的に変わらざるを得ないとも思っている。AIと人間の

囲碁の勝負の結果は、それほど大きな出来事だと考える。