ドラマ「下町ロケット」の最終話が放送された。久しぶりに見る面白いドラマ
だった。このドラマの視聴率(20%前後)も高く、原作本がベストセラーとな
っている。主人公は佃航平(役・阿部寛)、従業員200人の中小企業の社長で、
技術者だ。過去に自身が研究開発したロケットエンジンを搭載したロケットの打
ち上げに失敗している。エリートのロケット研究者の挫折である。その後亡くな
った父親の跡を継いで佃製作所という中小企業の社長となった。中小企業の経営
がどれほど厳しいものかは、私には理解が及ばないことである。中小企業の倒産
は後を絶たないのが現実である。このドラマの設定のリアリティーの度合いはわ
からないが、企業を舞台にエンターテインメントとして人を描いた作品と評価で
きるであろう。
このドラマのキーワードは、「夢」「挑戦」「試練」「勝負」と言えると思う。
佃製作所の技術力と仲間の力で数々の難題を乗り越えていくストーリーである。
ロケットエンジンのバルブの開発により、巨大企業・帝国重工への部品供給に成功
し、佃航平の「夢」であるロケットの打ち上げに成功する。その過程で数々の試練
が展開される。最大の問題は資金である。製品開発には技術力と資金力が不可欠と
なる。資金のバックアップは取引銀行や取引企業である。企業間の競争では資金力
がものをいうのがビジネスの世界であろう。中小企業が生き残れるのは高品質の技
術力と信用しかないと言える。信用の大切さはすべてに通じることだ。
このドラマの人物設定で見逃せないのは、二人の人物だと私は見ている。
一人は、佃製作所の殿村経理部長(役・立川談春)だ。メインバンクから出向して
きた経理の専門家で、社内からは嫌われる存在だった。その彼が銀行に辞職届を提出
し、捨て身で会社のために社長に進言する人物である。佃社長を支える重要な役割を
担っている。もう一人は、帝国重工の財前部長(役・吉川晃司)の存在である。佃製
作所の高度な技術力を評価し、社益のために、覚悟を決めて藤間社長(役・杉良太郎)
に進言する人物である。会社の評価は業績で決まるが、業績の良い会社には優秀な人材
がいるということだ。
このドラマの悪役の代表は、椎名社長(役・小泉孝太郎)と貴船教授(役・世良公則)
である。ガウディ計画は、佃製作所によって新型人工弁・ガウディの動物実験に成功
する。若い技術者たちの努力の結晶とも言えるものだ。椎名社長が指示したデータ偽装
の発覚によって、佃VS椎名の勝負は決着する。このドラマを引き立てているのは悪役
の存在かもしれない。日本人の好む「勧善懲悪」のシナリオである。人の中には、善性
と悪性が内在している。現実の社会は、自己利益を追求する人間が多いと言える。
自身の夢を持ち、その夢の実現に向けて挑戦し続ける人生は至難であるが、人の憧れ
とも言えるのだろう。そのような想いを感じさせるのが「下町ロケット」ではないか。