妻が、紬の織物を教わったK&MのMさんが亡くなって2年の三回忌、一緒の

弟子3人で、墓参りしてランチとのこと。私は、蕎麦屋を探して出かけるつもり

でいたが、新聞で、磐田市豊田町の「長藤まつり」の記事を読み、行きたく

なった。妻に言うと、「一人で行ったら」の言葉を聞いて、行くことに決めた。

三島駅から豊田町駅を時刻検索して、9:58発の新幹線に決め、家を出た。

 私が、出張以外で、観光で一人で出かけるのは、結婚以来初めてだ。7日に

出かけるので、無理はできないので、日を変えて妻を誘うのをやめた。それ故に

一人で出かけることになった。

 いつもの駐車場において、三島から新幹線に乗った。退職してから、乗って

いない。富士山に見送られた三島。途中から雲が前に出てきた。新富士駅、静岡駅に

停車し、大井川を渡り、掛川駅に10:43に着き、JRに乗り換え、浜松方面

に向かい、豊田町駅で下車した。シャトルバスが来るまで、30分程待たなければ

ならない。6キロと書いてあったので、、タクシーに乗り、11時20分頃に

目的地に着いた。大勢の人たちが来ていた。評判の長藤ということだろう。タクシー

の女性運転手が「どちらからですか」と尋ねたので、「裾野からです」と答えると、

「ここの長藤を見るためにわざわざ来たのですか」と。私は「他にも行きますので」

との会話が途中で交わされた。

 国指定天然記念物の藤の木は、推定樹齢850年と書いてあった。静岡県指定

天然記念物の藤の木が5本とのことだった。見事な藤の花だ。見頃は過ぎては

いるが、十分見ごたえがある。かつてはもう少し長かったようだ。買った写真

からそれを感じる。近くに藤の公園の藤棚も見事だ、白と紫の藤のコラボだ。

シャトルバスの時間のために、公園の中は入ってはいないが、長藤の中を入った

ので満足している。

 バスの中で、「香りの博物館」を耳にしたので、運転手に尋ねた。駅からは近く

歩いて行かれると聞いたので、下車させてもらった。ヨーロッパ、アンティーク

カップの香りとのパンフレットをもらい、入館した。1階のフロアーは無料で、

2階が展示室だった。素敵なティータイムの如く素敵なカップが並んでいた。

女性が喜ぶようなものだ。マイセン、セーブル、ウィーンなどのヨーロッパ

名窯磁器の18世紀から現代に至る様々なティー・ウェアと紹介されている。

私の知識にはない。香りをかぐコーナーがあり、一人しか入れない。そこには、

バーチャル映像で、風船が浮かぶ、その風船を指で指して割ると、香りが

出てきて嗅ぐことができる。マスクメロンと藤の花の香りを嗅いだ。私の鼻の

具合が今一つでわかりにくいが、十分香りを楽しめる。マスクメロンは、この

町の名産であり、藤の花は、豊田町の花になっているとのことだ。静岡の

高級メロンは、この町の名産だと知った。高級なので、私の口には入らない。

 豊田町駅からJRで掛川駅に戻った。人が誰もいなかった。観光地とは

思えない。駅から、掛川城へ向かって、途中の蕎麦屋で昼食にした。お客は

誰もいない。その店を出て掛川城へ行った。小さなお城だ。人もちらほらだ。

ほぼ20年前に来た時とは変わっていないとの印象だが、忘れている。

お城の写真を撮ったり、花の庭園の写真を撮りながら、周辺を歩いた。

二の丸美術館で、「近代日本画展」が開かれていた、横山大観、東山魁夷の名に

惹かれて入館した。川合玉堂、伊東浸水、福田平八郎、堅山南風、北沢映月

の画が展示されていた。私の好みは、展示では、東山魁夷の「浅春」だ。

 美術館を出てから、竹の丸の建物を見学した。昔の家老屋敷の跡地に建て

られ、大正時代の和洋折衷のステンドグラスが、2階にはめられていた。

現在は市に移管されている。昔は屋敷の裏に竹があったことから、竹の丸

と名がついたと聞いた。

 掛川城を後にして、掛川駅に戻った。時刻表を見たら、上りが来る時間

で切符を買う時間がなく駅員に証明をもらい、電車に飛び乗った。JRで

静岡に向かった。掛川駅発15:35で、菊川、金谷、大井川を渡り、

島田、六合、藤枝、西焼津、焼津、用宗、安倍川、静岡駅だ。新幹線では、

一駅だ。JRで、この路線に乗ったのは初めてだ。静岡駅着16:20。

 静岡駅でも友に携帯で連絡を取ったが。留守電になっていた。退職後

初めての静岡駅周辺である。呉服町通りに出ると、葵タワーがそびえていた。

その3階に「静岡市美術館」があった。綺麗な美術館だ。大原美術館展と知り、

来たいとは思っていた。大原孫三郎と児島寅次郎が、西洋絵画を日本に

紹介したと記されている。モディリアーニ「ジャンヌ・エピュテルヌの肖像」

が展示されていた。入口には、ポール・シニャック「オーヴェルシーの運河」

の写真があったので、ポストカードを買った。

 展示で、私の印象に残ったのは、二作品、岸田劉生の静物画だ。まさに生物画

との感想だ。「赤いリンゴ三個、茶碗、ブリキ缶、匙」(1920年、油彩)

STILL LIFEだ。リアル感と深さだ。真ん中上の「」の一字が光る。結核療養

で外出禁止の中で書かれたと。38歳で急逝とある。もう一枚の画は、福田美蘭

の「モネの睡蓮」(2002年)だ。モネの「睡蓮」は私の好きな作品だ。ルノワール

に並ぶ。私は、「少女・イレーヌ」と「裸婦」が好きである。
 
 福田美蘭の「モネの睡蓮」は、大原美術館の横にある蓮池の水面を描き、そこに

咲いているのはモネの旧宅から株分けされた睡蓮で、映り込んでいるのは工芸館

の土蔵の白壁だと書いてあった。この2作品を見れただけで充分であった。

モネの「睡蓮」のキーホルダーを買い、美術館を後にした。呉服町通りを少し

歩き、上島珈琲店に入った。スターバックスのスタイルと同じだ。それぞれが

個人の世界に入っている。こういう時代になったのだ。家に電話を入れ、新幹線

で帰るから1時間後の7時すぎだろうと言った。駅に向かい地下道を歩いた。

駅に着いてから電車の時刻を確認して、懐かしい「追分羊羹」を買って、新幹線

に乗り、三島へと帰ってきた。夕闇の中を、富士山が出迎えてくれているように

感じた。時々富士山を見ながら家路についた。富士山が見えなくなった近くに

私の家がある。一人ながらの急ぎ足の一日であった。