本日放送されたNHK囲碁トーナメント3回戦・第7局を観戦した。黒番は趙治勲二十五世本因坊、白番は高尾紳路天元の対戦で、解説者は武宮正樹九段であった。趙治勲は58歳のベテラン棋士で、7大タイトル獲得数が42期で、歴代1位である。私が囲碁を覚えたのが1980年頃であるが、その当時のトップ棋士で、現在の井山裕太4冠のような存在であった。80年代、90年代に大活躍したことが記憶に残っている。個性的な風貌と対局中にぼやくことが多く、感情の表現が豊かとの印象が強い。解説の武宮正樹九段は64歳で、趙治勲二十五世本因坊とは同じ木谷門下である。私が囲碁を覚えた頃の最初のファンは武宮正樹九段である。武宮正樹九段は「宇宙流」と呼ばれ、3連星を確立し、中央志向のロマン派の棋風で多くのファンがいた記憶が残っている。解説も独特で、囲碁を通して人生や、芸を語る棋士である。今回の解説もその持ち味が出ていると感じた。囲碁が大好きで、解説が好きだとも言っている。囲碁フアンのような気持ちで囲碁を楽しむ段階になっているようだ。同門には石田芳夫九段、故加藤正夫九段がいるが、その二人は私と同世代である。同門の趙治勲と同時代に活躍した小林光一名誉名人の記憶も強く残っている。私の上の世代には、林海峰名誉天元、大竹英雄名誉碁聖がいる。私の記憶に残るもう一人の棋士は、故藤沢秀行名誉棋聖で、「しゅうこう先生」と呼ばれ、囲碁棋士に大きな影響を及ぼした棋士であった。またエピソードも多かったらしい。その藤沢秀行名誉棋聖門下であったのが、本日対局の高尾紳路天元(38歳)である。現在は天元・十段の2冠である。私は、高尾紳路著作の「布石の基本」「中盤入門」「布石から中盤入門」を買ってざっと読んだくらいなので、棋力の向上にはつながらないが、考え方の勉強にはなっている。結城聡九段の「手筋入門」の本を読んでいるが、基本の考え方は同じことを書いている。私の実践ではなかなかその成果がでるわけではないが、少しでも基本の考え方を吸収したいとは感じている。
 今回の対局は、武宮正樹九段が見ごたえのある名局だったと言っている。プロの碁らしい一局なのだろうが、コウによる大きな振り替わりがあるなど変化に富んだ碁で、先番の
趙治勲二十五世本因坊に有利な流れと解説した。武宮正樹九段は目算をしないようで、「流れ」を体感で判断し、直感の手を重視して、その直感の裏付けを考えるのがプロとの言い方をしている。解説でも目算をしないで、「流れ」で判断するようだ。その判断ができるのがプロだと考えているようだ。石田芳夫九段の解説では、コンピューターと呼ばれたように目算をして、形勢判断をしている。解説者に共通して感じることは、対局者の目算の方が正確なようだ。対局と解説では、集中力が違うということなのか、対局者の表情をよく見る傾向があるようだ。プロでも打った直後にミスを感じて反省することがあるらしい。それが表情に出てしまうということだ。アマチュアでは打ってから気がつくことは普通にあることだと思うが、プロも同じようなことをしてしまうのが囲碁で、人間のやることの共通点がある。今回の対局は終盤に黒番の趙治勲二十五世本因坊にそのミスが出た。武宮正樹九段はこの一手を敗着と感じたようで、それまでの「流れ」では黒の勝ちと見ていたようだ。その判断が正しく、黒のミスの一手で逆転した。しかし、結果は微細で、1目半の白勝ちであったが、白の苦しい碁の展開だったことを高尾紳路天元は認めている。この碁はビデオに撮ってあるので、再度見ようと思っている。私なりに面白いと感じた碁である。