WHAT IFシリーズ⑤ サンチェスvsアルゲリョ | Go↑kunの海外ボクシング記♪

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ボクシング…勝者と敗者のあまりにクッキリとしたコントラスト…。魅力的な選手達のバックグラウンド、ボクシングビジネスの側面、プロモーター達の思惑、選手の声、あまり入ってこない海外ボクシング情報を書きたいと思います!宜しくお願い致します!

こんばんは。

今日は久々にこのシリーズを書いてみましょう!
もうお馴染み、フランク・ロティエルゾさんの記事です。

今回も伝説のファイター同士。
無敵の王者のまま23歳の若さでこの世を去った、メキシカン、サルバドール・サンチェス。
そしてニカラグアの英雄、3階級制覇の貴公子、アレクシス・アルゲリョです。
サンチェスはアフロヘアで、何と言ってもあの全KO時代のウィルフレド・ゴメスをKOした
二枚目。アルゲリョは…やっぱり負け試合ですが、プライヤー戦が印象深いでしょうか。

サルバドール・サンチェス
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アレクシス・アルゲリョ
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80年代前半にリングを湧かせた2人の対決や如何に!

【以下ニュアンス訳】

『WHAT IF…』というフレーズが最も当てはまるファイターは、長いボクシング史を見渡しても晩年のサルバドール・サンチェスをおいて他にはいないのではないだろうか。今回はもしサンチェスがアレクシス・アルゲリョと戦ったら…というタイトルではあるが、それだけでなく、もしサンチェスが23歳という若さで自動車事故という悲劇に見舞われなかったら…という論点からも多くを想像出来てしまうからだ。サルバドール・サンチェスは1982年8月12日の早朝4:00~5:00、何処からかトレーニングキャンプに戻る途中、白いポルシェでトラック後部に激突した。即死だった。噂では、サンチェスは誰かと路上でレースをしていたのではないかと言われている。

サンチェスが他界した時、彼は世界No.1ファイターの1人と目されておりPFPランキングもトップクラスだった。No.1だと言う人も大勢いた程だ。WBC世界フェザー級王者であり、死から1ヶ月前の7月21日には、無敗のアフリカン、アズマー・ネルソンをマジソンスクエアガーデンでストップしており、9度目の防衛に成功したばかりであった。

サルバドール・サンチェスは16歳でプロデビュー、18連勝(17KO)を記録。19戦目にしてメキシコ王者だったアントニオ・ベセラに挑むも1Rにダウンを喫し、判定負けをしている。この敗北、そしてダウンは生涯唯一のものだった。サンチェスはその後、ファン・エスコバルとのドローを挟んで15連勝。その中にはカルロス・ミミラやティトの父親、フェリックス・トリニダドSr.も含まれている。

1980年2月2日、サンチェスは時のフェザー級王者、ダニー・ロペスと対戦。ロペスは1970年代後半に数多くの激戦を勝ち抜きテレビでも放映されていた人気王者だった。デーブ・コーティ、ファン・マルバレス、さらにはマイク・アヤラといった強豪にも勝利していた。その王者をサンチェスは一方的な展開で13RTKOに下す。強豪王者を相手にしながら、あまりに一方的な展開だった為、変な噂が流れた程だった。

初防衛後、1980年6月21日にサンチェスはロペスとのリマッチを迎える。ここでもサンチェスは一方的な試合を見せ、ロペスを14Rでストップ。改めてその強さを証明して見せた。この後、1980年9月13日~1982年7月21日までで、サンチェスは7連続防衛を果たす。対戦相手はいずれ劣らぬ強豪揃い。パトリック・フォード、ファン・ラポルテ、そしてあのKOキング、ウィルフレド・ゴメス、更に前述のアズマー・ネルソンである。

サンチェスのキャリアでのハイライトは何と言っても1981年のWBC世界Jr.フェザー級王者だったウィルフレド・ゴメスとの一戦だろう。ゴメスは当時無敗。33戦32勝32KO1分だった。試合前はゴメスが2-1で有利と言われていた。ドン・キングが仕掛けた『Battle of Little Giants』と銘打たれたこの一戦は、予想に反し、サンチェスが8Rにゴメスを破壊、Jr.フェザー級へ追い戻す結果となった。初回からダウンを奪い、ゴメスの頬骨を骨折させていたというから、サンチェスの強打は驚くべきだ。

あまりに突然の悲劇で、早朝にポルシェと共に亡くなってしまったサンチェス。勝利した相手は、当時のクラスで一線級ばかりだった。ルーベン・カスティーリョ、ウィルフレド・ゴメス、そして後の世界王者、ファン・ラポルテ、そしてアズマー・ネルソン。

サンチェスはKOパンチャーとしてはあまり知られていなかったが、パンチは強かった。しかしながら真骨頂はカウンターだっただろう。正確なカウンターを対戦相手に見舞い、リングに沈めてきた。ゴメスとのリマッチ、あるいはライト級でアレクシス・アルゲリョへのチャレンジ等も検討されていた中の悲劇。それは想像の世界でしか実現しなくなってしまったのだ。生涯戦績は44勝32KO1敗1分。1991年に世界殿堂入りをしている。

一方のアレクシス・アルゲリョもサンチェスと同じ様に16歳でプロデビュー。驚くことにデビュー戦はカッチョロ・アマヤという選手に1Rでストップ負けであった。アルゲリョは後に3階級を制覇することになるが、リング上での戦いでベルトを失ったことは1度もなかったのだ。デビュー戦に負けた後、40連勝近くを成し遂げWBAフェザー級王者のアーネスト・マーセルに挑んだ。アルゲリョは敵地パナマで経験豊富なマーセルに判定負けを喫する。アルゲリョを退けたマーセルは引退、その後はメキシコ出身のハードパンチャー、ルーベン・オリバレスがマーセルの返上したタイトルを獲得していた。

1974年11月23日、アルゲリョはアメリカでのデビュー戦であり、WBAフェザー級タイトルマッチで、ルーベン・オリバレスを13RKOで下しタイトルを獲得、4度の防衛でタイトルを返上し、転級して5戦目で、当時の安定王者、アルフレド・エスカレラの保持するWBC世界Jr.ライト級のタイトルに挑んだ。アルゲリョは激しい攻めを見せ、13Rでエスカレラをストップし2階級制覇を成し遂げた。

Jr.ライト級のベルトを3度守った後、エスカレラとの再戦を迎えるが、又しても13Rでストップ。結局合計でJr.ライト級のベルトは8度守ったことになる。これはアルゲリョの防衛回数としては最多の階級であった。サンチェスと同様にJr.フェザー時代のアルゲリョは殆どの強敵と戦い勝利をしてきた。ルーベン・カスティーリョ、後の世界王者、ボビー・チャコン、バズーカ・リモン、そしてローランド・ナバレッテ。

1980年10月、アルゲリョはJr.ライト級の王座を返上、その8ヶ月後にWBCライト級王者であったジム・ワットを下し自身3階級目のベルトを手にする。初防衛戦はトップコンテンダーのレイ"Boom Boom"マンシーニだったが、14Rでストップ勝ち。この後、3度の防衛を重ね、4階級制覇を目指すことを決意した。

アルゲリョはJr.ウェルター級を制覇する野望を胸に1982年11月12日、Jr.ウェルター級最強王者であったWBA王者のアーロン・プライヤーに挑戦する。美しい夜がマイアミのオレンジボールを包んだ頃、プライヤーの強さがアルゲリョの野望を打ち砕く。史上最高峰とも言われる戦いであったが、アルゲリョはプライヤーのスピードとパワーの前に、キャリア最悪とも言える滅多打ちにさらされ14Rストップ負けを喫した。

10カ月後、アルゲリョは再びプライヤーに挑むも10RTKOで返り討ちに合ってしまう。Jr.ウェルター級タイトル獲得に2度失敗したアルゲリョは引退を決意。その後何度かカムバックするも良いところは見せられなかった。生涯戦績は82勝65KO8敗。1992年に国際殿堂入りを果たしている。

サンチェスとアルゲリョを比較してみる。サンチェスのキャリアは彼が23歳の時に終止符が打たれている為、単純な比較をすることは難しいだろう。可能だとすれば、お互いにタイトルを獲得したことがあるフェザー級時代。もっともアルゲリョが一番輝いたのはJr.ライト級だっただろうが…。そしてお互いのファイトスタイルが全く異なっていたのも予想を難しくさせる。アルゲリョは、アグレッシブにプレッシャーをかけるボクサーパンチャー型だった。両拳にKOする力を秘めていた。サンチェスはカウンターパンチャーだった。素晴らしいボクサーでありハンドスピードは上回っていただろうか。そして両者共にとても打たれ強かったと言えるだろう。

サルバドール・サンチェスは、彼に向ってくるファイターを得意としていた。ロペスとゴメスには、彼らが経験したことのない様な強い連打を浴びせ粉砕してみせた。それも彼ら2人がピークの時だ。逆にガンガン前に出ないタイプの方が良い勝負が出来たケースが多いだろう。それとサンチェスのコンディショニングの素晴らしさも忘れてはならない。彼が効いたり、疲れたりしたところをまるで観た覚えがない。

まるでハグラーvsハーンズの様な凄まじいペースで8Rも戦ったゴメス戦でさえ、超ハイペースの試合をコントロールしていたサンチェス。しかも疲れ等、微塵も感じさせなかった。更に彼は鉄の顎を持っていた。ロペスもゴメスも、サンチェスの顎を直撃する様なパンチを放っていたが、サンチェスは一切表情を変えずに戦っていた。しかしながらサンチェスが最も有名なのは何と言っても恐ろしく正確なカウンターパンチだろう。対戦相手のミスに付け込むことで言えばサンチェスはマスターと言えた。相手がミスをした瞬間から放たれる3発か4発のコンビネーションはまるでレーザーにガイドされる様な正確性を持っていた。

アレクシス・アルゲリョはボクサーパンチャーのプロトタイプと言えるだろう。背は高く180cm程、150ポンド以下のファイターとしては長身であり、基本に忠実なファイターであった。少しジョー・ルイスに似ているかも知れない。ガードは高く顎を引き、ストレート系のパンチが得意だった。パンチの出し方もとても効果的で、出したパンチは大抵がターゲットに直撃した。ルイスとの違いは、アッパーとフックか。アルゲリョの方がえぐい角度で放つことが出来たし、ルイスと同じ様に両拳にダイナマイトを持っていた。

アルゲリョは、どちらかと言えばプレッシャーをかけていくスタイルだっただろう。とはいえ、フレイジャーやデュランの様なスタイルではなく、やはりジョー・ルイスの様な巧妙なプレッシャーのかけ方だった。ルイスとの共通点は多い様だ。苦手なタイプは、足が速い選手だったかも知れない。苦手とまでは言えないかも知れないが、彼らと良い試合をする選手は足が速いという共通点はあったと思う。逆に向かってくるのが得意な選手は、殆どをド派手にKOしている。

サンチェスと同じ様にアルゲリョも打たれ強かった。アルゲリョはJr.ウェルター級戦でアーロン・プライヤーと戦うまでは、殆ど効かされたことはなかっただろう。スタミナも豊富でどの様なペースでも戦えた。プライヤーとの2試合も14Rと10Rでストップされるも、それまではもの凄いペースで戦っていたのだ。

では、サンチェスとアルゲリョがもし戦わば…どちらが勝っていたのか。

かなり前からこの戦いの予想を聞かれることがあったが、私には答えが出なかった。スタイル的にもどちらかが上回ると言うことに確証が持てないのだ。

アルゲリョは、巧妙にサンチェスを追い、プレッシャーをかけていく側であるだろう。サンチェスは出てくる相手が最も得意だ。但しアルゲリョのプレッシャーはガンガン出てくるタイプではない。サンチェスのフットスピードは素晴らしかった。効果的に前後左右に動くことが出来たが、ヘクター・カマチョの様なただ走るだけのファイターではなかった。アルゲリョが苦手というタイプでもなかったと思う。

ハンドスピードはサンチェスが上だっただろうから、アルゲリョには有効な武器になったかも知れないが、アルゲリョはサンチェスの対戦相手程、パンチをミスしないだろう。サンチェスの見事なカウンターもアルゲリョ相手はそう簡単に決まるとは思えない。例え一発カウンターが入ったとしても、タフなアルゲリョは持ちこたえるだろう。サンチェスがアルゲリョをKO出来るとは考えにくい。逆に、サンチェスもタフであったし、ビッグパンチを連発で受ける姿を想像が出来ない。

サンチェスのカウンターとアルゲリョの強打がありながら、KO決着が想像出来ない。フェザー級での激突を考えると、試合のペースによって勝敗が左右されるのではないか。アルゲリョが激しい打ち合いに持ち込めれば有利になりそうだ。サンチェスは押されたら必ず打ち返す気の強さも持っていた。ロペスもゴメスもサンチェスを打ち合いに持ち込むことは出来たが、サンチェスは彼らのパワーをさほど気にしていなかった様に思えた。果たしてアルゲリョを相手に同じ様に出来たのか。

もしアルゲリョが彼本来のペースで試合を組み立てようとしたらサンチェスが有利になりそうだ。プレッシャーのかけ方を間違うと一気にサンチェスがペースを握るだろう。サンチェスのスピードと動きが、判定で彼の手を上げることになるだろう。

この試合の予想を難しくしている理由の一つが、我々はサンチェスの全盛期を観たことがないという点だ。彼は亡くなった時、まだ23歳だったのだ。彼の全てを観たとは絶対に言えないだろう。アルゲリョに関しては全盛期を観ることが出来、プライヤーに敗れる場面まで目撃することが出来た。逆に言えばアルゲリョがフェザー級の選手を相手に負ける姿が想像出来ないとも言えるのだが。

一つ言えることは、サンチェスはアルゲリョの様に階級を上げて成功は出来なかっただろう。アルゲリョ程、体格面で大きくはなかった。サンチェスはもしかしたらライト級で壁にぶつかったかも知れない。アルゲリョがJr.ウェルター級でぶつかったのと同じ様に。しかしながらアルゲリョの場合は、階級の壁というよりは、プライヤーの壁とも言えるのではないか。もしJr.ウェルター級で他の王者と戦っていたら、恐らくアルゲリョは4階級制覇を楽に達成していたのではないかとも思うのだ。

サンチェスとアルゲリョのフェザー級での対戦相手を比較してみる。サンチェスの対戦相手の質がより高いことに異論はないだろう。アルゲリョがフェザーで倒した強豪は、ルーベン・オリバレスとロイヤル小林、それに対しサンチェスは、ダニー・ロペス、ファン・ラポルテ、ウィルフレド・ゴメス、そしてアズマー・ネルソンだ。もし2人がフェザーで戦えば、サンチェスの僅差判定勝ちを予想する。勿論、確信はまるで持てないがね。

以上

殆ど予想になってなかったですねぇ!
でも2人がどれだけ偉大な王者だったかは理解出来ますねぇ…。

サンチェスStory

それにしてもサンチェス…若く、そして王者のまま…大場さんを思い出してしまいますねぇ…。
とにかく勘が良さそう!オフェンスもディフェンスも…。

アルゲリョStory①


アルゲリョStory②


アルゲリョStory③


いやぁ…面白かったなぁ!
2人とも…めっちゃすげぇっっす!!

チャオ♪♪