花が咲くと一斉に甘い香を放つオレンジ色の小さな十字の花。
毎年秋の祭囃しが聴こえる頃の夜の散歩で提灯の明かりと金木犀の香を楽しんでいたのに。
今年は開花が遅かった。
同じことを感じていたのは私だけではなかった。
今年ボランティアを引退した友人からも

「今年キンモクセイまだ咲いてないよね?」
そちらもそうでしたか。
「ようやく咲き始めました。甘い香。」
こっちもここ2~3日で咲いてきたよ。
「そういえばキンモクセイってトイレの芳香剤に最近見かけないよね。」
そうね。昔はキンモクセイとジャスミンがトイレ芳香剤の代表みたいなもんだったよね。
さりげない季節の変化を感じてやり取りが出来る友人の存在が有り難い。
同じ目線で森の自然と付き合っていた頃が懐かしい。
かつての実家の庭に生えていた金木犀は幼い私のおままごとの材料だった。
時にはふりかけ。お味噌汁の具にもなったっけ。
今まだあの庭にあるんだろうか。
夜は色彩が奪われるため、嗅覚と聴覚が鋭くなる。
金木犀の香とかすかなカネタタキの声を楽しみながら感じる夜の空気もかなり冷えてきた。
気付いたら秋も真っ只中。
冬のニオイを感じる季節になっていたんだね。