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レビュープラスさんからのレビュー案件である『「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法』を読んだ。
キャッチーなタイトルであるが、実際の内容は「空気」を読んで思いどおりに自分で動く、サバイバルの技術論である。
だから、タイトルをそのまま受け取り、人を動かしてやろうという思惑がある人は若干、肩透かしを食うかもしれない。そのような人は「空気」を読み損ねる可能性がある。
(「タイトルをつける」という行為もまた、「空気」を作ることのひとつであることは言うまでもない)
そして、そういう人にこそ本書は読まれるべきものだと思う。
そう。「空気」を読むということは単なる人心操作術などではなく、むしろそうした操作に巻き込まれることなく、自分自身を見失うことなく生きていくための方策である。
「空気」を読むことが優先順位の上位に上がるこの国において、そのスキルはそのままサバイバル能力のひとつに数えられるはずだ。
そして「空気」を読むということも、ある種のリテラシーが要求される。
通常、リテラシーというのは文章あるいは、文脈を読み取る能力を指す。▼
リテラシー(英: literacy)とは、
書き言葉を正しく読んだり書いたりできる能力
何らかの表現されたものを、適切に理解・解釈し、分析し、また記述・表現する能力 (Wikipediaより引用)
本書は、書き言葉でもなく、表現もされていない不可視のものである「空気」を読み取るにはどうすればいいか、そしてその「空気」を変えるにはどうすればいいかということを、「空気」を4つに分類することで、それに対応する形で、それぞれのタイプの「空気」の動かし方、変える方法をわかり易く解説している。
読み進めながら、おれはガスのことを思い出した。
われわれが日々使用しているガスは無臭だが、ガス漏れによる事故を未然に防ぐために、特殊な匂いをつけているという話だ。
本書が示しているのはそれと似ているかもしれない。
無味無臭である「空気」に様々なテクニックを駆使し、色や匂いをつけることで、「読み取り可能」な状態にするということ。
見ることができるものに人は怯えることはない。読み取ることができるものに人は縛られることはない。
つまり、そういうことだ。
この『「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法』は、実は、リテラシーを磨くことが、自由へと向かう道なのだとわれわれに示唆しているのだ。
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