以前の記事で、節電の取り組み方について、目的に適っていないことが黙々と行われていると書きました。いろいろな本を読んでいると、どうもこれは日本人の行動特性そのもののようです。つまり、内面では「おかしい」と思っていることがあっても、取り立てて声をあげずにまわりの空気に従うという行動特性です。

社会心理学者の山岸俊雄さんは「心でっかちの日本人」という著書において、「相互依存関係」という言葉でこの日本人の行動特性を説明しています。

例として「いじめ」が取り上げてられているのですが、例えばある学年の1組でいじめが起こり2組でいじめが起こらないとしましょう。このような差が起きるのは、両方のクラスの生徒の「心のあり方」が違うからではなくて、1組では「いじめに対して声を発しないほうが得な状況」が作り出されているからだ、ということを指摘しています。

つまり、いじめに対して声をあげるという行為の利得とロスを比較した場合に、1組では「いじめのないクラスを実現できる」という利得よりも「自分が逆にいじめられるかもしれない」というロスが大きい状態になっているため、いじめがなくならないということです。

コンサルタントの冨山和彦さんも「挫折力」という著書のなかで 、「日本の組織の行動様式はシーソーに似ている。集団の調和を重視し、空気の支配の影響下にある日本人を中心とする組織は、一定以上の人数が宗旨変えを明らかにすると、あとは付和雷同的に同調する場合が少なくない」と述べています。

日本人は周りの状況を見ながら行動する性向が強いので、ある臨界点を越えるか越えないかで、結果として状況が正反対の方向になるということです。別の言い方をすれば、ある臨界点を超えれば一気に流れが変わるということを指しています。

その点では、冨山さんが「シーソー」と書いたのは確かにわかりやすいアナロジーです。あるいは天秤といってもいいかもしれません、天秤が一方に傾いている場合、片方に例えば100gのおもりが載っている場合、もう一方の端に10gのおもりを乗せても天秤はピクリとも動きません。さらに10gのおもりを載せても同じです。しかし、既に95gのおもりが載っている状態であと10g足せば、天秤は一気に動いて反対側に倒れます。

コンサルティングを行う際には、クライアントの行動様式を変えてもらわなければならないことも良くあります。その際に、ここで書いたような日本人の行動様式を意識し、「心の中の想い」と「行動」のギャップを生み出しているしくみを意識しないと、なかなか「行動を変える」という結果が表れてきません。

ギャップを埋める方策として「利得」を高める方法、つまり個々人の心に働きかけてモチベーションを高めるということは重要ですが、時として「ロス」を下げる方法、つまり「こうしたとしても別にあなたに損なことはないですよ」という状況を作り出すこともまた、人の行動を後押しするうえで非常に重要だと思っています。

特に、いくら正論を振りかざしても事が前に進まないときは、その裏では、色々なわだかまりやしがらみが存在する場合がほとんどです。そういったものを丁寧に解きほぐさないと、いくら前に事を押しすすめようとしても動きません。

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