最近時事ネタが多くなっていましたが、今日は新日鉄と住金の経営統合の話題です。


かねてから日本企業がグローバルな競争化で勝ち残っていくためには規模の拡大が必要だと考えており、そういう意味では両者による今回の決断を応援したいと思っています。


しかし、両者によるプレスリリースを読むと少し不安がよぎってしまいます。全体的に「きれいごと」が多いということと、特に冒頭で「今後、両者は統合に向けた検討を、対等な精神に則り進めてまいります」と書いてあるところで、大いに引っかかりました。


この両者を比べると、売上高も、生産量も、利益率も、資本金も、従業員も、株式時価総額も全て新日鉄のほうが上です。よって、普通に考えれば、統合後の会社、あるいはこの統合のプロセスそのものは新日鉄が主導する形になるのが自然です。


しかし、強者が弱者を飲み込むという構図では統合相手の住金側が話し合いのテーブルに乗ってこないでしょうから、今回のような統合ケースでは「対等の精神」が金科玉条のように扱われ、よって、プレスリリースの冒頭にそれがわざわざ書かれるようになります。


ただし、私も前職で事業統合の経験をしましたが、「対等の精神」の結果、コスト、特に固定費が「1+1=2」のような統合となったとすれば、それは失敗の元になります。プレスリリースでは、ただ一文だけ「経営資源の集中と再編成を行うことで更なる効率化と製造基盤の強化を図ります」とありますが、これが非常に重要になってきます。


事業統合の目的は一言で言えば何かといわれれば、私は「(両者の単純合計よりも)損益分岐点を下げること」と答えます(もちろんシェアの拡大や顧客基盤の拡大といったことも重要なのですが・・・)。つまり、固定費を両者の単純合計よりも少なくして、そして調達シナジーにより変動費率を下げるということです。これにより、より利益率の高い会社になり、また景気変動に左右されにくい強い体質の会社になるわけです。


幸い、今はグローバルには鉄鋼需要が伸びており、旧来の製造設備の統廃合ということよりも、最も需要の伸びている地域に最新鋭の高効率なミル(製鉄所)を作るというほうが、経営課題の優先度が上がっていると思うのですが、今後その需要が一巡したときには、古く老朽した効率の悪い工場の扱いが必ず議論の的になります。


また人員についても同じです。特に間接人員を中心に十分にスリム化してから統合しなければ、景気変動で収益性が低下したときに、そこで人員整理を行う羽目になってしまいます。


まだ両者はLOI(統合協議に向けた意向確認書)を締結しただけで、これから合併比率や経営陣の構成、統合事業計画の作成など、統合にむけた肝になる部分の協議が待ち受けています。


ここで、「対等の精神」を持ちながらも、実質的な主導者である新日鉄がリーダーシップを発揮して、思い切った施策を織り込むことができるかが成否を分ける鍵かと思います。


これはどちらか一方だけが一方的に身を削るのではなく、お互いがそれぞれ贅肉をそぎ落としてスリムにならなければなりません。思い切ったことをやろうとして統合が破談になるようであれば、そもそも一緒になったとしてもうまくやっていけません。


もし、思い切った施策が打てずに、もし「きれいごと」ばかりの統合計画のままでスタートするならば、統合後に大きな苦しみを味わうことになる可能性が高いと思っています。