前回の記事では林原の経営破たんについて書きましたが、そこでも触れたように、林原は「戦略的非上場」という方針を掲げて、株式市場とは少し間をおいて、長期的スタンスで基礎的な研究開発を行ってきました。


結局は経営破たんをしたわけで、結果論としては適切な内部統制が働かなかったなどのマイナス面が露呈してしまったわけですが、会社のあり方として、「上場をしない」という選択肢も当然ありだとは思っています。


そういう点において、最近上場企業がMBO(マネジメント・バイ・アウト:経営陣による自社の株式取得)によって非上場化する動きが目立っています。


昨日はTSUTAYAを展開するCCC(カルチュア・コンビエンス・クラブ)がMBOを発表しましたし、今日は、アート引越しセンターを展開するアートコーポレーションがMBOを発表しました。


一昔前までは、会社を起業したら最後は上場することが目標というような考えがありましたが、冷静に今の状況を振り返ってみると、上場するメリット、あるいは上場企業が上場を継続するメリットが少しずつ少なくなってきているのかもしれません。


ざっと思いつくだけで、非上場を選択する以下の4つのような理由が思い浮かびます。


1)資金需要がない。国内人口が減少し、長期的には国内の需要が伸び悩むか減少することが予測されている中で、海外に展開することを選択せず国内を中心に事業を展開する企業にとっては、株式市場から調達するほどの新たな資金需要が今後見込まれない


2)経営の自由度を増す。上場廃止して、プライベートカンパニーとなることで、取締役の選任や、M&Aに関わる次項など、株主総会の決議を要するような事項をよりスピーディーにかつ自由に行うことが出来る。(企業の上場子会社を100%子会社化する時は、主にこの理由によります)


3)上場を維持するコストが増えた。一昨年度から日本でもJ-SOX法が適応され、内部統制に関するコストと工数が増大しました。会計監査法人にはこれまで以上に多くのフィーを払わなければならないですし、企業の内部でも、内部統制に関わるプロセスの整備やのリスクの管理などが強く求められるようになりました。


4)銀行から借りたほうが金利が安い。上場して資本市場から資金調達を行った場合には、配当など一定のコストがかかります。長引く低金利の影響で、企業によっては株式市場からの直接金融で資金を調達するよりも、銀行からの間接金融で調達したほうが資本コスト(ようは金利)が安い場合があります。


このような理由から、非上場を選択する企業が今後とも増えることが予測されます。


一方で、林原の例を見るまでもなく、非上場企業には自律的な統制機能が必要です。そこがルーズになると、経営陣による暴走という悲劇が待ち受けています。


そもそも、株主というのは会社のステークホルダーの一部でしかありませんし、上場して企業価値を高めることが企業の唯一最大の目的ではありません。


もちろん、事業をスタートする上では資金が必要ですし、それを提供するのは株主です(個人出資も含め)。しかし、株主の預託を受けて経営を行う経営者は、お客様に目を向けて、そして従業員の力を最大限に引き出して、社会に対して継続的に付加価値を提供し、社会から必要とされる会社であり続けるることが本質的には重要です。


そういう意味では、上場を廃止してプライベートカンパニーを目指す企業は、株式市場というパブリック(公)な目が届かないわけですので、従業員や顧客により一層目を向けて、厳しく自らを律していかなくてはならないと思います。


ちなみに余談ですが、最近のMBOの流れは、上記のような純粋な目的以外に、景気低迷でM&Aが下火になり業績が伸び悩む証券会社が、MBOを次の収益源として目をつけて、上場企業に積極的に働きかけている結果かもしれないなあとも思っています。


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