前回の記事で、Googleの戦略について書いた「Googleの正体(牧野武文著:マイコミ新書)」という本を紹介しました。

Googleの決算発表によると、売上高は約73億ドル、営業利益は25.5億ドル(いずれも2010年第3四半期)で、営業利益率は実に35%です。「無料」にみえるサービスを提供しながらこれだけの売上と利益を稼ぎだすことができるのは、良く知られたように、Adwords(アドワーズ)と呼ばれる検索連動型の広告による収入があるからです。

これは簡単にいえば、検索語句と関連の深い広告を(検索結果とは別に独立して)表示させ、利用者がその広告をクリックすれば、広告料金(料金はその語句の人気によって変動)を広告主から徴収するというビジネスモデルです。ターゲットが絞られている分だけ、テレビ・新聞・雑誌というマスコミ媒体に比べると広告料金は安くなり、小規模な商店でも気軽に、効果の高い広告を出すことができます。

さて、冒頭で紹介した本によれば、売上は以下のような要素に分解できます。

・広告収入による年間売上=Googleの利用者数(A)×利用者あたりの年間検索回数(B)×検索結果画面で広告をクリックする割合(C)×広告単価(D)

Googleのサービスのコスト構造を推測すると変動費的な要素はほとんどなく、大部分が研究開発費、人件費、減価償却費といった固定費的な要素と思われます。とすると、単純に売上を伸ばせば伸ばすほど利益を稼ぐことができます。

このように考えるとGoogleが取るべき戦略は非常に単純で、上記のA~Dの各要素を増加させていかに売上を伸ばすかということに尽きます。また、無償で提供されているサービスも、以下のようにすべて広告収入の増加という目的のためと理解することができます。

例えば、スマートフォン用O/Sの「アンドロイド」の開発、PC用のO/S「クローム」の開発は、いずれも利用者数(A)を増やすための施策の一つです。

Googleの利用者数の増加のためには、まだWeb環境が整っていない新興国市場を開拓する必要があります。このような市場では固定通信インフラを整備するより、無線通信インフラを整備するほうがコストが安くつきます。通信インフラが整えば、次に端末として使うPC(いわゆるネットブック)やスマートフォンが必要ですが、そこで使われるO/Sが無償で提供できれば端末の価格も安くなり、新興国での普及に弾みがつきます。

さらに先進国においては、固定ネットワーク環境よりもモバイル環境のほうがより多くGoogleを利用しかつ広告に反応する割合が高いようです。これは、外出するという行為自体が、食べる、買い物をするという目的があるためです。つまり無償のアンドロイドO/Sを開発し先進国でのスマートフォンの普及を加速させることで、上記のBやCの要素を増加させることになります。

また、表示される広告の順位は、スポンサーからの広告料の多寡ではなく、あるキーワードに対して利用者が最もよく利用する広告が上位にきます(検索結果の表示と同じロジックです)。つまり、より利用者(A)が増えて、より検索回数(B)が増えるにつれて、上位に表示される広告がより多くの人にクリックされる割合が高まっていきます(Cの要素が増える)

最後に、Googleは広告収入から得られる巨額の利益を、次なるサービス(しかも無償で提供される)の開発に惜しみなくつぎ込んでおり、上記B~Dの要素が増えて売上が増えると、その結果さらにGoogleは強くなり、競合他社を駆逐するということになります(つまりAの要素が増える)

このように考えると、すべてが正の循環の中で拡大するビジネスモデルとなっており、Googleが成長すればするほど、その強みが強化され参入障壁も大きくななるという、ある意味で恐ろしいビジネスモデルです。

限界があるとすれば、全世界のすべての人間がネットを利用して、1日何回もGoogleの利用するような状況になった時ですが、逆にその時Googleはネットインフラにおける絶対的な巨大企業として、世界で君臨していることになるのです。

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