昨年の今ごろ、緊急入院していた父。
余命約1年・・・胃ガンのステージ4と告知されてから早、1年。
先日、仕事帰りの夕方、実家に帰ったら珍しく父が留守。
「パパは?」
「パソコン教室のお友達のお宅にお借りしてたもの返しに行ったっきり帰ってこないのよ」
母、ちょっと不満気。
「へ?男の人でしょ?」
「違うわよ~!!女の人。」
ほー、ジジー やるやん~
しかし、もう食事時。
家から5分ほどのお家だから私が迎えに行くことに。
伺ったお宅は手入れが行き届いた日本家屋のスッキリとしたお屋敷。
チャイムを鳴らすと明るくパワフルな声とともに
元気な、おばちゃまが出ていらした。
「あらあら、ゴメンなさいね~私がお引止めしちゃって!!」
いかにも良いところの奥さまという風情のマダムだ。
そして、まるでその家の主か・・・という調子で父が登場。
「素晴らしいお屋敷だろー」と自慢気にぬかす。
よそ様のお屋敷だろが
社交的なおばちゃまは、まー入って入って!!!と私を引っ張り込む。
いやいや迎えに来ただけですから!!!
と、言いつつ門から玄関まで引きずり込まれる。
玄関にはお花が美しく生けられ、その奥には
娘さんが書かれたという掛け軸がお客さまを迎える。
生活を気持ちよく楽しんでいらっしゃるんだって印象を受けた。
さて、おばちゃま、御年80歳との事だけど、若々しい。
父とはリハビリテーションのデイケア仲間でもあるらしい。
話しによると仲間内での父は、おしゃべり上手で社交的。
そして身だしなみにも気を使っているオシャレさん(えええ?)
ご婦人方からはたいそう人気者なのだそう。
憧れの先輩の話をする女子中学生のように語る、おばちゃま。
それを耳が遠いはずなのに、まんざらでもない表情で聞いている父。
見てはいけない世界を見てしまったような・・・
それでいて羨ましいような、嬉しいような、くすぐったいような・・・
ヘンテコな気分になっちゃった。
さて、翌日
実はもう一人、パソコン教室の帰り重い荷物を持った父をわざわざ車で
送って下さったご婦人にもお礼の品を届けに行くことになっているとか。
しかし、すこぶる体調の悪い父に代わって私がそのお使いをすることに。
グーグルマップに誘導された地域は中学時代のボーイフレンドのご近所。
懐かしさも加わって楽しい気分と、さて今回はどんな方かしらんという期待。
チャイムを押して出てこられたのは、穏やかですごーく自然体のおばさま。
日頃、父がお世話になっていますと伝えると「いえいえ、こちらの方こそ!」と
とてもサッパリした雰囲気。
「そんな、お礼なんて!!帰り道のついでだったのよ~」と恐縮された。
ここでも、父のムードメーカーぶりをお話頂き、
私の知らない父の世界を知る機会となった。
「良い人達だろう。二人とも」
と帰宅した私に父は言う。
「うん、お二人とも正反対のキャラだけどちゃんと自分を持ってる人だね」
「あー、そうか。そうかもなー。
何の気兼ねもなしにいろいろな話を楽しくできる人たちなんだよ
僕のガールフレンドたちは」と父。
ガールフレンド・・・
いい響きだ。80歳過ぎててもガールフレンド
余命宣告をされた人にとって「死」という恐怖心は常にあるはず。
でも、だからこそ生きてる時間を有意義に過ごしたいと思い
それを実行する父はアッパレだと思う。
(アッパレって「天晴」と書くのだって今、知りました)
