50人の視線が一人に注がれ、次の言葉が紬ぎだされるのを待っていた。
『誰かの役にたちなさい』
口から出そうにも、涙で言葉にならないが、それでもじっと目を凝視し言葉が発せられるのを待っていた。
多くの目には涙があふれていた。
娘が中学校を卒業した。
卒業式が終わり、教室に移動し最後の授業行われた。
最後の授業は、廊下と教室を隔てている窓は取り外され、教室からあふれた親御さんたちは、廊下からも見守っていた。
最後の授業は、各班が考えたクイズを順番に答えるアイスブレイクのようなものだったが、その後授業の締めで、担任の先生から子供たちに向けて最後のメッセージが伝えられた。
2年間担任を勤めていただき、いろいろな思い出がこみあげてきたのだろう。
しばらく涙で声にならなかったが、それでも先生から発せられる言葉を聞き逃すまいと、生徒のみならず、親たちも全身全霊でむきあっていた。
先生の言葉は最後の生徒へのはなむけの言葉として、人に役にたつ人間になろう…そういって締めくくった。
卒業式…みんなが感動に包まれて、生徒だけでなく、親たちも泣いていた。
いろいろな反省や後悔もきっとあるのだろうけど、感謝の思いがそれをかき消していく。
娘は将来先生になりたい…そういった。
世の中の誰もが人が幸せになるために日々努力している。
だけど、仕事を通じて、感動に包まれる仕事ができている人は、そう多くはないようにも思う。
今、目の前で繰り広げられている光景は、ドラマの中での出来事ではなく、リアルそのものだ。
人と人とが交わり、本音でぶつかりあうことができたから、これほどまでに感動につつまれるのだと思う。
卒業式に出席させていただき、ほんとに素晴らしいものを見させていただきました。
お世話になった先生方、本当にありがとうございました。