思いがけなかったけど、意図したできごと | ニシムラマサキのブログ 【株式会社 西村工務店 代表取締役】【 SASAYA・うづかの森 オーナー】

ニシムラマサキのブログ 【株式会社 西村工務店 代表取締役】【 SASAYA・うづかの森 オーナー】

どうすれば地域を『素敵』に変えられるのか、誇るべき田舎になるのか、そんなことばかり考えています。

 

 
昨日、Hachikita fes 前夜祭が私が管理運営しているHachikita U Base(HUB)で行われた。
 
HUBはハチ北にあるゲストハウスの名前だ。
 
HUBは、ハチ北の中でも、上位を争う規模の大きな旅館だ。
 
もう10年ぐらい前になるだろうか…
 
今の施設の元のオーナーが高齢となり、跡継ぎ問題で揺れて、結局、その方は建物を手離す決断を下した。
 
不動産屋の看板が玄関に掲げられ『For sale』の文字。
 
私自身、ずっと悶々としていた。
 
空き物件が増えることは、観光業を営むこの地域にとって決してプラスの印象を与えるものでない。
 
そして、それ以前に、数十年前バブルをおう歌し、この地域で、宿業をやることはある意味、農業やサラリーマンをやるより、はるかに大きな経済的利益を得られ、後代は、それを継承するのが当然だと思っていたのに、今は、それを継ぐことにリスクしか感じなくなってしまったという時代の変化。
 
とても閉鎖的なこの辺境の地にあって、排他的だと思われる部分もあるのだろうが、それが他所の人に購入されてしまうことによる、地域の文化を維持していけなくなってしまうということに対する不安。
 
そういうものがずっと、頭の中でうごめいていた。
 
この物件、元オーナーが辞める決断をしてから、数年間、そのまま放置されていた。
最初に元オーナーが示した金額では折り合いがつかなかったからだ。
 
地元の誰かが買ってくれれば…
最初、私はそう思っていた。
 
その数年前、地元の中学校が廃校となり、それを購入し、現在『うづかの森』という宿泊施設を営んでいるが、宿泊業は宿泊業で、厳しさがあることは身をもって知っていて、これ以上物件を増やすことは、できないと思っていた。
 
しかし、地元からの手はあがらなかった。
そうこうしているうちに、他地域の人が買うという話が入り、実際に交渉も進み、売却も済んでしまった。
 
なんとかしなければ…
そんなふうにずっと思っていたけれど、この地域の人で解決ができなかったことに悔やんだ。
 
だが、その売却されたと思われていた物件だったが、途中で交渉が決裂し、白紙に戻った…という話が再び飛び込んできた。
 
直観で、自分が買う、今度は決めるのにそれほど時間はかからなかった。

交渉をすすめて、物件を手に入れた。
本来なら、事業計画を綿密に立てたうえで、買う、買わないの判断をするのが普通だろう。
 
だけれど、それ以上にこれは地域課題だと思った。ここに住む人が解決すべき問題

周りがやらなければ自分がやるしかない…そう思った。
 
 
大学を卒業した25年ほど前。
カナダに行った。
 
当時はインターネットもまだ十分ではなく『地球の歩き方』がバイブルで、自分もバックパックで、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー周辺をうろついていた。
 
そのときによく利用したのが、ユースホステルつまりゲストハウスだ。
 
大部屋にベッドがならび、同じ空間に寝泊りをする。
トイレ、バス、ダイニング、ロビーは共用で、旅行者同士が、そこでコミュニケーションをとり、楽しかった場所、楽しかった体験などをお互いの情報を交換する。
 
本当に楽しかった。
そんな自分の原体験がある。そんな宿がハチ北に一つぐらいあってもいい。
 
ちょうど、世の中はインバウンドブームで多くの外国人をみかけるようにもなっていた。

大都市にもたくさんのゲストハウスを見かけるようになった。
 
私は、その宿をHachikita U Baseと名付けて、バックパッカーのようなもっと気楽に集まれる宿をつくろうと考えた。
 
自転車の車輪の中心をハブという。
羽田空港、成田空港、関西空港などはハブ空港と呼ばれているがいうあれだ。
 
人が集う場まる中心になる場所。だからハブ。
そんな場所にしたかった。
 
英語のHUBという言葉を頭文字にして、あとで『Hachikita』『Base』はくっつけた。
 
Baseも基礎とか、底辺とか、そういう意味がある。
 
Uはいろいろ考えてみたけど、なかなか妙案が浮かばない。言葉いろいろ考えてみた。
United
Unique
Universe
Unlimited
などなど…
 
どうもしっくりこない。

UはYOUとも語感が似ているし、利用する『あなた』が思いつくUでいいじゃん!とそのままにでいくことにした(笑)
 
客室は、ザ昭和な和室だ(笑)
 
だけど、ロビースペースには少しだけこだわった。
みんなが楽しく集い、語らい、お酒を酌み交わしたり、お茶を飲んだり歌ったり、踊ったり…。
そして、ここはハチ北だ!
ハチ北が山の中にあり、アウトドアアクティビティの場所であるならば、フィールドアスレチックだ!
 
人が集えるよう小さな部屋を潰して広い空間を確保しつつ、限られたスペースに、フィールドアスレチックのアイテムを再現し、しつらえた。
 
ただ全く知られてなかった。
2年前からは、地元村岡高校に通う生徒の下宿として利用し始めた。
オープンしたものの、しばらく客もなく、そんな情報聞きつけた学校関係者から、下宿として利用できないだろうか…と相談を受け、建物の一部は高校生の寮として利用している。
 
そうして今にいたる。
 
 
前置きが長くなった。(前置きかよ…って突っ込み受けそうだが)
ここからが本題である(笑)
 
みんなが集えるスペースとしてつくったものの、意図したようには人は集まらかった。
 
数年前から、Hachikita Music Fes が地元の若い人を中心に、企画運営されている。

フェスを間近に控え、メンバーは準備を進めてきていたが、ご存じのとおり、季節外れの大型の台風2号が接近していて、予報どおり雨脚が強くなってきていた。

線状降水帯も予想され大荒れの予報。
しかし、チケットを販売し、アーティストも続々とハチ北入り。

朝、実行委員長でもある弟から電話が入った。
『この台風で、外でのしつらえは厳しく、HUBを貸してもらえないか』
イベントを中止にするわけにはいかない。
 
断る理由もなく、OKを下す。
 
私がやったことは、ただそれだけ…
 
あとは実行委員のみなさんが、がんばって会場をしつらえてくれた。
 
仕事が終わり、HUBにかけてつけると、熱気むんむんのフェス会場がそこにはあった。
 
娘の用事で途中何度抜けかしたけど、音楽、食、お酒(車の運転があったので飲めなかったけど…)、笑い、語らい…
 
私がここを廃屋の危機だった場所をみんなが集える場所にしようと決めて取り組んだHUB。
 
意図してたことが、おもわないところから舞い込んで、そこにすべてがあった。
 
たった一日の出来事だったけど、自分が夢見たことが現実になった。
 
実行委員のメンバーから、感謝の言葉をかけられたが、感謝しないといけないのは、私の方だ。

みんな夢を形にしてくれて、ありがとう。