
建築の仕事に携わっている中で、日に日に思いが強くなっていることがある。
それは『建物は建物だけにあらず』ということだ。
理想の家、理想のお店…
日々向き合う顧客は、そのことで頭がいっぱいだ。
もちろんそれは当然のことだ。
だけど、いかにして美しい建物ができあがっても、それが周囲と調和していなければ、その価値は半減する。
建物はできあがった瞬間から、古びてくるものであり、5年、10年すれば、目新しさもなくなっていく。
でも、経年変化していく中で、それでもやはり美しさを醸し出すのは、雑草が生えず、丁寧に整えられた周囲の庭先であったりするのだ。
私は、何も周囲に庭をつくれと言っているのではない。もちろん経済的に余裕があれば、しないよりしたほうがいい。
だが、それよりも何よりも大事なのは、歩道の端から伸びきっている雑草を放置しないことだ。
そうやって手入れするだけで、そこはすごく輝く。
私は、会社の前の道路敷地も草を刈る。目の前を通るのは、県道や、町道であるにもかかわらずだ。
夏に一度だけ、県土木が草刈りをしてくれるが、その一回ではやはり不十分なのだ。
会社内の敷地にあわせ、年に4回から5回ぐらい行う。
そうすると、不思議と建物と周囲になんともいえない雰囲気が醸し出されていく。
地域の人みんながそこを意識できるようになると、家はおろか、地区に美しさが醸し出され、それがどんどんと広がっていく。
『なんだかしらないけど、ここの地域は居心地がよい…』
そう思わせるのだとしたら、道の前の雑草の生え具合を見るといいだろう。