他所の場所に行ったときに、偶然に、同郷の人に出会ったりすると、妙に親密感を感じることがあります。
そもそも、考えてみれば、接点は単に、同じ地域であったというただそれだけで、そこに住むに至った歴史的背景も同一ではないだろうし、また血縁のように、実際に交わった何かがあったわけでもありません。
でも、やはり同じところで育ったというだけで、近しい気持ちになれるのは、そこに存在する土地に何らかの磁場の力のようなものがあるからなのだろうと思います。
そういえば、鮭やうなぎなどの回遊魚は、何を頼りにしてか、間違うことなく自分のふるさとの川へと戻ってくるというわけですから、スマートフォンの地図情報よろしく、その場所をを特定できるようなものが何か特定のものがあることは確かです。
だから、きっと私たちも土地が取り持つ縁、すなわち地縁というものが存在し、その人との距離をグッと縮めるのだと思います。
逆にいえば、近頃では、マンション住まいの隣人がどこ住む人ぞとばかりに、そこに地縁という見えない力が働いているにもかかわらず、その力を全く無視して、自分本位の生活を続けているのは、まったくもって自然の摂理に反しているし、またその縁を活かせない社会というのまことにさみしいものだなあと思ったりします。
『縁』というみえない絆は、今の科学で解き明かすことのできない摩訶不思議なものだけれど、そういう『縁』をもっと大切に生きていきたいと思う。