山あい農業観光論 | ニシムラマサキのブログ 【株式会社 西村工務店 代表取締役】【 SASAYA・うづかの森 オーナー】

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どうすれば地域を『素敵』に変えられるのか、誇るべき田舎になるのか、そんなことばかり考えています。

私は、建設業の傍ら、廃校になった中学校を改修して、『うづかの森』という宿泊施設を経営してまいりました。

 

そして、その中でわたしなりに見えてきた中山間地の農業について論じてみたいと思います。

 

私は、全国の地方創生をなしとげるには、地域の資源を活用することが欠かせないと考えていて、みなさんもそうおっしゃるに違いありません。

 

地方には田畑が広がっているわけですから、農業が資源であることは間違いありませんが、同じ農業と言っても大都市近郊や、平野部で行われる農業と、私たちのような中山間地の農業は、まったく異なっています。

 

養父市が『国家戦略特区』となっていることは全国でもよく知られるようになってきましたが、ではなぜ農業戦略特区として、国のモデル地域になったかとという背景を考えると、さきに行った、中山間地の農業で『稼ぐ』ということが相当難しいからだと思います。

 

中山間地と呼ばれる地域は、いわゆる棚田を多く抱えています。

一つの区画面積が小さく、急峻な斜面を利用していることがおおきいため、大きな農業機械が入りませんし、形もいびつで、とても非効率です。

 

但馬の米や野菜農家が少なく、兼業農家が多いのは、この地形に関係していることは否定できません。農業生産だけでは、稼ぐことが難しいからです。

 

『うづかの森』で、宿泊事業をするに思い至るに、私は地域の課題の解決にも取り組みたいと考えました。

 

うづかの森を運営することを考えたときに、周囲には、家がまわりになく耕作放棄地もひろがっていたので、それとかけあわせることで新たな価値を創造できないかと考えていました。

 

そこで、体験活動ができる宿泊施設というコンセプトを思いつきました。

 

実際、うづかの森を宿泊施設にするといっても、ホテルのようにくつろぎを提供する施設にするためには、莫大な投資が必要となりますし、それなら最初からそれにあうためのホテルを建設したほうがよほどましです。

 

では、施設の充実していない『宿』に人を集めってもらうためには、集まるための理由が必要となります。

 

周囲に田畑が広がっている場所でしたから、農業体験を目的として集まっていただき、そしてそこに宿泊を絡めることで、ここにとまってもらいお金を落としてもらおうと考えたわけです。

 

当初思い描いた形には少しずつ近づいていますが、まだまだ理想的なところにはいたっていません。

 

農業の生産ということだけをみてみると、当初おもっていた以上に農業は手間がかかるわりに儲からないことがわかってきました。

 

遊休農地を利用して、有機農法の野菜の生産や、減農薬のコメ作りに取り組んでいますが、思いのほか手間がかかりすぎ、当初思い描いた生産量からは程遠くなっています。

 

もちろん、まだまだ生産効率をあげて、コストダウンする余地は相当にありますが、いわゆる平野部で行うコメ作りに比べると、その効率ははるかに悪い言わざるを得ません。

 

コシヒカリにも、さまざまなレベルがあるとしながらも、一般的には、同じ米を生産してもそのコストは歴然としています。

 

中山間地において、単一作物を効率よくつくるということには、自ずと限界があるわけです。

 

そこで今、私が思う現段階の考えとしては、この地域の特性を最大限生かすためには、少量多品種生産を行うことだと思います。

 

多品種に取り組むことで、『効率化』ではない形を追求することができます。

 

ただ、やはり多品種だけでは、コスト的には厳しいままとなります。

 

それには、出口、つまりはどう利用するかということにも目をむけなければなりません。

 

となれば、うづかの森のような宿泊事業者と手を組み、それを料理品の中にくみこんでいくことができれば、少量多品種のメリットを生かすことが可能となるのです。

 

調理行程まで考えると、単一栽培にありがちな、形をそろえる、見栄えをよくするということに重きをおかなくてもよくなります。

 

なぜなら、調理として提供すれば、そのままの姿を味わってもらえるのは少ないため、とれる野菜の大小や形をそろえる均質性にこだわる必要がなくなるわけです。

そもそも少量多品種生産の農業の場合、均質なものをつくるということにはほとんど価値がなくなります。

 

そしてまた宿泊事業者と手を組むことで、どういうメニューを提供するのかということから逆算して、つくる野菜の種類などを変えたりすることができるようになります。

 

結論を述べると、アライアンスを形成し、宿泊事業者が連携して農産品の利用をおしすすめることが有効と考えます。

 

宿泊事業者がお客様に提供する料理においては、いろいろな種類の野菜を必要とします。

 

そうやってある程度の消費できる先を確保し、それに見合う分の量を地元から供給してもらうのです。

 

こうすることで、地産地消をより戦略的にすすめることが可能となるのです。

 

地方創生はまだまだ発展途上です。

これから我が町が再生するためにまだまだ試行錯誤が続くと思います。

 

私の考えが正しいかどうかはわかりませんが、これまで経験した知見の推移を披露したつもりです…。