東洋大の強さ | アマチュア野球をめぐる旅。

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高校野球を中心にアマチュア野球(ときどきプロ野球)の観戦記。

東都大学の開幕週は3試合開催、つまり参加六校を一日で見回す事が出来た。
注目は5連覇中の東洋大の戦いぶりである。


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『絶好の野球日和』という言葉が似合う天気と気候だった


大場翔太(現ソフトバンク)が大車輪の活躍をした07年。
大野奨太(現日本ハム)を中心に盤石の試合運びの08年。
東洋大の試合は、リーグ戦以外にも大学選手権、明治神宮大会でも何度も試合を観戦している。

東洋大は勝ち続けているが「おきまり」の勝ちパターンがない。
気がついたら、試合が終わったら東洋が勝っている、というのが試合後に残る感想である。

9月6日(日)、国学院大戦もそんな試合運びであった。1-1の同点の5回裏の場面。

二死から緒方凌介(PL学園)の投手ゴロを村松伸哉(光星学院)がファンブル(※記録は内野安打)。
打順は先頭に返り、小島脩平(桐生第一)が奇麗に中前安打を放った。

何でも無いゴロを後逸する間に、緒方が一塁から長駆ホームインで2-1と勝ち越す。
続く、木村篤史(愛工大名電)が適時打で3-1と引き離した(最終スコアは4-1で東洋大の勝利)。

東洋大は五分五分の状況を「二死・走者無し」から試合を決定付けたのだ。

一年生時に豪腕で鳴らし、日米大学選手権MVPに輝いた村松を久しぶりに観戦した。
別人のような投球スタイルになっていた。フォームこそ目に見えた大きな変化はなかった。

速球で押していた頃の自分のイメージを担保に、変化球を中心にカウントを整える。
制球を意識しているかのように繊細な投球スタイルになっていた。
左手のグラブと左脚が大回りする影響で左肩の開きが早くなる。
いわゆる球持ちが短く、打者からはタイミングが取りやすそうに見える。

東洋大の戦いぶりは主将・小島、春MVP・鹿沼らの出身である桐生第一の、それと酷似している。
桐生第一の強さを目の当たりにしている群馬県の高校野球関係者で、この意見は多く聞かれる。
清水隆之・三浦貴をはじめ現在も多数出身者が東洋大に所属する浦和学院の戦いぶりにも似ている。

両校は「上尾高校から東洋大」という同じキャリアを経た監督となった福田治男(桐生第一)と森士(浦和学院)が指揮を執っている。


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東洋大のシートノックには独特の様式美がある


二人は、3つ歳が違うので上尾時代は重ならないものの、野本喜一郎監督の薫陶を受けている。
東洋大では先輩後輩の間柄。と、言っても当時はほとんど交流は無かったという。
むしろ、交流はお互いに監督として立場を確立してから練習試合を通じて以来との事。

桐生第一・浦和学院ともに、打者は特定の選手とケースを除けば「大振厳禁」である。
基本的にはセンターから逆方向に粘り強いバッティングをしてくる。
守備では制球力のある投手を中心に、イージーミスが極めて少ない。

ちなみに、福田監督は昨夏甲子園出場決定後の部員のわいせつ事件から引責辞任で指揮から外れていた。
今年の夏は桐生第一が「らしくない」戦いぶりで四回戦で敗れている。
この敗戦が福田の存在感を浮き彫りにし、時期尚早という声もあるが監督に復帰を果たした。
福田辞任後の現一年生は、県内の有望選手は敬遠され、広島から入学者がいたりする。


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他の大学に比べても目立つのはベンチ前での円陣回数が多い事。
試合進行を妨げると批判もあるが、高橋昭雄監督が打席に向かう選手、打席に入った選手への指示が入念な事くらいだろう。

戦国東都はもちろん、秋の大学球界の主役は東洋大に間違いないと思わせる盤石の戦いぶりだった。