(75) 未知なる青へ

 

 

 

 夜空を見上げると、満天の星のあいだを、光の帯がよこぎっています。ヨーロッパの人は、それをMilky Way(ミルクの流れ)と呼び、中国の人は銀河と呼んだ。日本では、それは天の川と呼ばれています。

 天の川は、たくさんの星のあつまり、私たちが直接目で見ることのできる銀河系の一部です。

 

 宇宙空間は、極端な真空状態です。地球上で人工的に真空状態をつくったとしても、1立方センチに分子が3000万個もある状態が限度だそうです。ところが宇宙空間では、水素原子がわずかに1個か2個程度しかないといいます。

 

 

 氷ノ山から見上げた星空

 

 

 古来より人々の夢とロマンに溢れる夜空は、科学の進歩により宇宙の謎が次々と解き明かされているにもかかわらず、いまだに憧れと畏怖の世界として、私たちの頭上に輝いています。

 

 

 

       宇宙は何でも吸い込みそうな真っ暗闇、

       46億年前に光と共に太陽は生まれた

       地球は青く輝くいのちの星

       40億年前に生命は海に生まれた

       川をのぼり、陸に上がり、空に舞い上がった。

 

                              毛利 衛

                                     (宇宙飛行士)

 

 

       わたしはカモメ! カモメなの!

       濡れた砂から そっと飛べば

       帆船のなかで 星占いするヒトが見えてきて

 

                              新藤涼子

                                        (詩人)

 

 

       星占いの名人でも

       星の胎内で生じている

       新たな星の誕生劇は見徹せない

       ましてあなたの胸の火花の

       ゆくえを予言するなんてことは

  

                              大岡 信

                                        (詩人)

 

 

 これらの詩は、JAXA  宇宙航空研究開発機構が、公募と寄稿を組み合わせて、2003年度に編纂した宇宙連詩『地球の生命』の冒頭3詩です。

 

 

(ご参考)

 宇宙連詩は、5行詩、3行詩、5行詩、・・・と、5行詩と3行詩の繰り返しから構成されています。

 また、直前の詩の中から、一つの言葉か、1行を引用します。

 

例えば、大岡信さんは、直前の詩(新藤涼子さんの詩)の中の『星占い』という言葉に着目し、その言葉をそのまま引用しています。

 

新藤涼子さんは、直前の詩(毛利衛さんの詩)の中の『空に舞い上がった』というアイデアに注目し、その言葉を出発点に、『わたしはカモメ! カモメなの!』と引用して、第2詩を詠んでいます。

 

 

            カモメ

 

 

宇宙連詩の第3期(2008年~2009年)では、宇宙飛行士の若田光一さんが、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中、一編の詩を寄稿しています。

 

 

 第3期宇宙連詩 第25詩

 

     真闇に浮かび青く輝く水の惑星を眼前に

     その私たちのふるさとに愛しさを感じ

     命を与えられた事を有難く思う

     明日も青い空へ挑み未知なる宇宙を拓こう

     そこに夢があるから

 

                             若田光一

                                     (宇宙飛行士)

 

 

 第3期宇宙連詩 第26詩

 

    ふたたび私たちは生まれたばかりの無垢な赤子

    見えない魂のへその緒でふるさとの星とむすばれ

    はるか彼方にひそむ答えを求めて限りなく問い続ける

 

                             谷川俊太郎

                                        (詩人)

 

 

 

 谷川俊太郎さんに続く第27詩、あなたなら何を詠まれますか?

 

 

 

 紀州 日ノ御碕から太平洋を望む

 

 

 声優・城達也さんのエンディングナレーションが流れます。

 「今、万感の思いを込めて汽笛がなる。今。万感の思いを込めて汽車が行く。  一つの旅は終わり また新しい旅立ちが始まる。

さらばメーテル。さらば銀河鉄道999。さらば少年の日。」
 

 

          『青い地球』

                      <銀河鉄道999・エンディングテーマ> 

        

        目をとじて 想い出す

        母さんの面影

        遠くはなれた 青い地球よ

        やすらかに眠れ

        メーテル

        またひとつ 星が消えるよ  

        赤く 赤く 燃えて

        銀河を流れるように 銀河を流れるように

 

        淋しげな ほほえみが

        母さんに似てるよ

        遠く宇宙に 散らばる星に

        話しかけてるの

        メーテル

        いつの日にか しあわせつかむよ

        熱く 熱く 燃えた  

        生命(いのち)が輝くように 生命が輝くように

 

        メーテル

        母さんを見てるみたいだ

        青く 青く 澄んだ

        瞳に勇気がわくよ 瞳に勇気がわくよ

 

 

         「さよなら銀河鉄道999」DVDジャケットより

 

 

 

 

 暗い海に地平線が消え、夜の闇がわたしたちを包みこむ時、古来より語り継がれるロマンが浮かび上がってきます。

 

 

 望遠鏡もない平安時代、夜の闇に浮かぶ星たちをそれぞれの想いで眺める人がいました。

 今や彼らは、夜空に輝く小惑星として水の惑星・地球を眺めています。その名も 

          『Kukai』  (占星術師 : 弘法大師・空海)

          『Seimei』 (天文博士 : 安倍清明)

          『Teika』  (天文家   : 藤原定家)。

 

 

 藤原定家は、「明月記」という日記風のエッセイを著しています。

その中には天文記録が多く書かれています。

 日食、月食、惑星の異常接近などがありますが、特に客星、不意に現れるお客さんの星という意味、の出現記録については重要な記事です。

 最も有名なのが天喜二年(1054年)の夏に現れた客星で、急に明るい星が現れ、木星くらいに輝いたそうです。

 18世紀、望遠鏡観測により淡い星雲が見つかり、「かに星雲」と名付けられました。20世紀になってから、この星雲が膨張していて約千年前の爆発によることがわかりました。

 それに該当する記録は世界中で2件、一つは中国で、もう一つがこの「明月記」でした。

 この客星の輝きは、太陽より数倍重い星が自爆したときに、一夜にして数万倍も明るくなる「超新星爆発」だったのです。

 

 望遠鏡なしで見えた超新星出現記録は世界中で8回、その内の3回を藤原定家が観測したものです。

 

 

 小惑星に名を残した偉大な天文家・藤原定家は次のような歌を詠んでいます。

 

 

      星のかげ 西にめぐるも 惜しまれて

              あけなんとする 春の夜の空

                             藤原定家

 

       冬の木の 霜もたまらぬ 山風に

              星の光りの まさりがほなる

                             藤原定家

 

 

 


 COSMOS (ピタゴラスによってコスモスと名付けられた宇宙)

 

 

 

 眺める夜空には、はるか百数十億年の宇宙の歴史が刻まれています。

遠く宇宙に散らばる星から眺めると青く燦然と輝く光が見えます。未知なる水の惑星・命の星。それは奇跡の星、瑠璃色の地球。